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『刀狩り―武器を封印した民衆』藤木久志 農民たちは刀を取り上げられていなかった?

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 「刀狩り」の概念を変えた一冊

筆者の藤木久志(ふじきひさし)は1933年生まれ。群馬工業高専の講師や、聖心女子大学での助教授職を経て、立教大学へ。立教では名誉教授にまでなり、その後は帝京大学でも教鞭を振るった。

残念ながら2019年に亡くなられてしまったが、日本中世史を専門とされ、戦国期を中心とした著作が数多くある。特に民衆視点で戦国時代を捉えなおした歴史観は、この時代の研究に多くの影響を与えている。

刀狩り―武器を封印した民衆 (岩波新書 新赤版 (965))

『刀狩り―武器を封印した民衆』は2005年刊行。岩波新書からの刊行だが、現在絶版となっており、新本で手に入れるのは難しいかも。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

藤木久志ファンの方、民衆の目線から戦国史(特に織豊政権期)の歴史を見てみたい方、「刀狩り」の本来の目的について知りたい方、民衆と武力の行使について考えてみたい方におススメ。

内容はこんな感じ

秀吉による刀狩りによって民衆は武装解除された。しかし果たしてそれは真実だったのか。これまで常識とされてきた歴史認識に真っ向から反論。刀狩りが導入された時代背景、実施に当たっての大名たちの反応、施行後の民衆の変化。複数の史料を読み解きながら、刀狩りが本来意図していた目的を明らかにしていく。

農民は刀を取り上げられていなかった?

秀吉の刀狩りは武士以外の「帯刀」を禁じたもので、実際に全ての武器を民衆から取り上げた訳ではなかった。刀狩り後も武器の所持は認められており、二本差しや大刀を身に帯び(帯刀)なければ携帯すらも咎められなかった。

刀狩りというと、その昔の学習マンガかなにかで読んだ、狩り集めた刀槍がうずたかく積み上げられ、憤慨してたりしょげかえってたりする無力な農民たちってイメージが強かったんだけど、この人の研究によるとそれはまるで違っていたらしい。これってけっこうスゴくない?

最後はちょっと飛躍し過ぎのような……

実際には江戸期を通じ、農民は大量の刀剣類や鉄砲を所持していたらしい。にもかかわらず、一揆などの暴発時でも出来るだけ武器を使わずに済ますような抑止力が働いていたという指摘は興味深い。

筆者はこれこそが日本人の平和の歴史への強い共同意志だと最後に述べている。自衛隊みたいな奇妙な武力を持つに至ってしまった遠因も、ひょっとするとこのあたりに求めることが出来るのかも知れない??うーん、でもさすがにこの結び方は、飛躍し過ぎなのではないかと。

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