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『これで死ぬ』羽根田治 53のアウトドア死亡事例を収録。人間は意外に簡単に死んでしまう!

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アウトドアに出る前に知って起きたい死亡事例集

2023年刊行。筆者の羽根田治(はねだおさむ)は1961年生まれのフリーライター。アウトドア関連、特に登山時の遭難をテーマとした著作を何作も上梓している。有名なのは全六作にもなる「遭難」シリーズだろう。

これで死ぬ アウトドアに行く前に知っておきたい危険の事例集

表紙及び、本文中のイラストは秋山貴世(あきやまたかよ)が担当している。すべての事例にイラストがセットで付いてくるのでイメージが湧きやすいのは本書の利点だと思う。

山と渓谷社の特設ページはこちら。

PR TIMESに掲載された本書のリリースはこちら。

産経新聞にレビューが掲載されていたのでこちらも紹介しておこう。

内容はこんな感じ

転倒する。滑落する。落石に当たる。熊に襲われる。毒蛇に咬まれる。ハチに刺される。カタツムリに触れる。毒キノコにあたる。鉄砲水に流される。ため池に落ちる。高波にさらわれる。離岸流に流される。アウトドアでの行動には、死に結びつく要因がいっぱい!どんな事例で人は死に至るのか?回避する方法はないのか?53の実例と共に紹介していく一冊。

目次

本書の目次は以下の通り。

  • はじめに
  • この本の使い方
  • 1章 山で死ぬ
  • 2章 動物にあって死ぬ
  • 3章 毒で死ぬ
  • 4章 川や海で死ぬ

本書は四つの章に別れていて、具体的な「死亡事例」と、それに対応した「死なないためには」を収録。それぞれの章末にはコラム「もっと知っておきたい安全知識」が入る構成となっている。

人間は死ぬときはコロッと死ぬ

打ち所が悪ければ、人間はただ転倒しただけでも死んでしまう。死とは遠いもののように思いがちだが、身近なところに命を奪われる危険は潜んでいる。ましてや、アウトドア環境に身をさらせばリスクは格段に高まる。ただ、街中での平穏な日常を謳歌しているわたしたちは、アウトドアでの危険性はなかなか認識しにくい。

『これで死ぬ』では具体的な53のトラブル事例を収録している。死亡事故はどのようにして起きるのかを、実際に起きた事件と共に紹介していく。全ての事例にイラストが付き、また、どうすれば死なずにすむのかを「死なないためには」のパートで紹介しているので更に理解が捗る。

やっぱりアウトドアは怖ろしい

わたし自身の話で恐縮だが、学生時代にワンダーフォーゲルの同好会に入っていて、社会人になっても細々と登山を続けていた。通常シーズンは2000メートル以下の山にしか行かない低山ハイカーで、盛夏期に北アルプスの表銀座を辛うじて歩ける程度のスキル。30代半ばに喘息をこじらせて以後は残念ながら山歩きは断念している。

そんな程度の乏しい経験値のわたしなのだが、十数年の登山歴の中では、転倒や道迷いは何度も経験してきた。転倒はどんなに気を付けて歩いていても起こる。疲れの出る下山時、特に道の状態が悪かったり、暗い樹林帯では足もとが十分に確認できず転んでしまうことがある。道迷いも、それなりに地図を読み込んだつもりでもハマるときがある。何度も訪れている山域でも、悪条件が重なると迷ってしまうことがあるので本当に恐ろしいと思う。

全143頁の本書中、第1章「山で死ぬ」には半分に近い63頁が割かれている。それだけ山のリスクは大きいということなのだろう。山歩きをされる方、これから山歩きをしてみたいと思っている方には是非一読していただきたい。

野外生物も怖い!

第2章は「動物にあって死ぬ」である。クマ、イノシシ、ダニ、蜂、サメ、オニダルマオコゼ、ダツ、オニヒトデ、ブユ、カタツムリ&ナメクジについての危険性が提示されている。クマはわたしも一度、山中で(かなり遠距離ではあるが)遭遇したことがあって、血の気が引いた記憶がある。

クマやイノシシのような大型哺乳類の脅威は分かりやすいとして、実感しにくいのはダニに刺されて死ぬ可能性だろう。これも藪に入ればジャンジャン出てくるので、遭遇そのものは避けられないんだよなあ。カタツムリやナメクジの類も寄生虫を持っているので触っては駄目とされている。

また、マリンスポーツをしないので全く知らなかったのだが、高速で泳ぎ、突然ヤリのように人体に突き刺さってくる「ダツ」という魚が存在することを本書で初めて知った。「ダツ」は全長1メートル程度の細長い魚で、南の海には多いのだとか。

なんだかわからないものは食べない

アウトドアでの数々の危険を解いた本書で、唯一回避が可能なのが第3章「毒で死ぬ」の部分だろう。プロの手を経ていない野草やキノコなどは、素人判断で軽々しく食べない。これを守るだけでかなりの実害は防げるような気がする。現地で採れた野草やキノコは、アウトドア環境ですぐに食べようとしないことだ。これは、多少なりとも経験値のある人間の方が「自分なら大丈夫」とリスクが高くなってしまうのかもしれない。

海も川もやはり怖ろしい

最終の第4章は「川や海で死ぬ」だ。鉄砲水、高波、ため池への転落、離岸流に戻り流れ。水辺にはリスクがいっぱいで、読んでいるだけで怖ろしくなってくる。マリンスポーツをしないことで、かなりのリスクは回避できるものの、身近な川の増水などはいかんともしがたいので、それぞれの危険性について知っておくことは有用だと思う。

ちなみに、本書掲載の「海や池に落ちてしまったとき」「川に流されたとき」の対処策として、「背浮き(着衣泳法)」が紹介されているのだが、波や流れのある海や川では必ずしも有効な方法ではないようで、山と渓谷社のHPにはお詫びと訂正が掲載されている。これ、再版されたら直るかな。

本書籍の下記の項目に、適切ではない内容がありました。

P.136-137 
・海や池に落ちてしまったとき
・川に流されたとき

 上記の対応として、本書では「背浮き(着衣泳法)」を紹介しました。また、海上保安庁や消防、自治体、教育機関、メディアなども、水難事故防止の一手段として、インターネットや講習を通してこの方法を奨励しています。
 しかし、最近の実証実験などにより、波や流れのある海や川では、溺れそうになったときに背浮きでは対処できないということが指摘されるようになってきています。
 海や川での水難事故を防止するための最も適切な対応策は、本書内でも推奨しているライフジャケットを着用することです。水辺でのレジャーにおいては、大人も子供も必ずライフジャケットを着用するようにしてください。
 背浮きに関する記述については誤りかつ説明不足であり、お詫びして訂正いたします。

これで死ぬ アウトドアに行く前に知っておきたい危険の事例集 | 山と溪谷社より

筆者による類書としては、自然界に存在する「危険な生物」を網羅した『野外毒本』もおススメ。

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