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『マンガでわかる統計学』大上丈彦 統計の本質が直感的にわかる初学者向けガイド本

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統計学に関する初学者の疑問をやさしく解説!

昨今のデータサイエンスブームにあてられたわけではないのだが、統計の勉強を始めて半年が経過した。もともと文系人間であったことに加えて、高齢化に伴い理解力が低下しているわたしは、統計の学びに苦しみ、サブテキストとして手を出したのこちら。

2012年に刊行された書籍。わたしが購入したのは2020年のもので、第20刷。けっこう売れている。Amazonには「【18刷り、7万部突破のベストセラー! 】」とあり、この分野では定番の一冊となっているようだ。みんな統計の学習で悩んでいるのだと、ちょっとだけ安心した。

マンガでわかる統計学 素朴な疑問からゆる~く解説 (サイエンス・アイ新書)

筆者の大上丈彦(おおがみたけひこ)は、教育集団メダカカレッジを主宰する人物。プログラマ、ディレクタ、予備校講師等を経て現職に。本書以外にも『マンガでわかる微分積分』『ワナにはまらないベクトル行列』『眠れなくなるほど面白い微分積分』など、初学者向けの数学参考書を何冊か上梓している。

この書籍から得られること

  • 統計学の「どうして?」が直感的にわかる
  • 分散、標準偏差、正規分布、推測統計、仮説検定の基本がわかる

内容はこんな感じ

分散とは何なのか?正規分布、二項分布、ポアソン分布って何?推測統計って?どうしてそうなるのかわからない。数式を覚えるのが面倒。用語の意味がわからない。統計を学び始めた人間が陥る悩みを、わかりやすい説明と、マンガでゆる~く解説。ポイントを本質的な部分に限定し、確実な理解へと導く。初学者の「つまづきの石をひろう」一冊。

目次

本書の構成は以下の通り。

  • はじめに
  • 第1章 平均・分散・標準偏差
  • 第2章 正規分布
  • 第3章 いろいろな分布
  • 第4章 推測統計
  • 第5章 仮説検定
  • おわりに

取り扱っている範囲は、目次からもわかる通り、「平均・分散・標準偏差」「正規分布」「推測統計」「仮説検定」となる。三章の「いろいろな分布」は、「二項分布」を中心とした内容。ちょっとだけ「ポアソン分布」についても触れている。

全部が全部マンガではないので注意

本書は「マンガでわかる」とあるが、全編がマンガにはなっていない。

本書は概ね、ページの左半分が解説、右半分がマンガとなっている。解説文で書かれている内容を、マンガパートで理解を深めるスタイルだ。文字を読むのが辛い!全部マンガで読みたい!という方には向かないので、その点は注意が必要。

統計の本質が「直感的」にわかる

『マンガでわかる統計学』の最大の特徴は「統計の本質が直感的にわかる」点にある。統計学の初学者はどうしても、数式や、見慣れない記号、文字だけの説明に圧倒されがちで、なかなか本質的な部分を理解できないことが多い。その点、本書ではマンガを多用した、ビジュアルで直感的に理解させる書き方をしてくれているので、とても分かりやすい。

例えば、統計学の基本中の基本「分散」については、数式で書くと以下となる。

 

分散を式で書くとこう

分散を式で書くとこう

既にこの時点でダメだと思う方も多いだろう(わたしも最初はそうだった)。

これを本書では正方形の面積に例えて説明してくれる。各データについて、一辺の長さが「平均からの距離」であるような正方形を割り当て、これら正方形の面積の平均が「分散」であると説明する(カラフルな長方形がビジュアルで描かれわかりやすい!)。この場合一辺の長さが「標準偏差」に相当する。

文字で書いてしまうと意味不明かもしれないが、絵で解説されると、ストンと頭に入ってくるから不思議。本書では「分散」の考え方だけでも三つの事例を示しており、すべてを理解する必要はない。「どれかでわかればよい」としていて、複数の考え方に接することの大切さを教えてくれるのだ。

二冊目、サブテキストの重要性

冒頭の「はじめに」で筆者はこう書いている。

本来数学は「1冊だけにすべてを頼る」のが危険な学問です。(中略)2方向からの図面で立体が立ち上がるように、複数の説明から「脳内で数学が立体的に」構築されます。ですから、本書とともに、他の本も使ってください。教科書のおともにぜひどうぞ。

『マンガでわかる統計学』p5はじめにより

ひとつの事象を理解するために、複数の説明を聞くことで、より学びが立体的になっていく。本書は本書でもちろん、優れたガイドブックではあるのだが、ベースとなる教科書的な一冊は別途、持っていた方が良いかと思われる。

『マンガでわかる統計学』は第一章の「分散」や、第二章の「正規分布」など、項目別に分かれて書かれているので、メインのテキストにつまづいたら、関連するところだけ拾い読みする。そんなスタイルでも良いかと思う。わたし自身は、本書をそのように使ってきた。

放送大学の『身近な統計』もおすすめ!

ちなみに、わたしが統計学入門用に、教科書として使っているのが放送大学の『身近な統計』。4,180円(税込み)と、少々値段はお高いが、DVD(エクセルの事例が入っている)もついているので、それだけの価値はある。

放送大学の『身近な統計』を半年間学んでみた結果レポートはこちら。