「文系AI人材」になるためには?
2020年刊行。筆者の野口竜司(のぐちりゅうじ)はZOZOTOWNの開発を担当している子会社ZOZOテクノロジーズにてVP of AI driven businessを務める。
本書の他に、『管理職はいらない AI時代のシン・キャリア』『A/Bテストの教科書』『Live! ECサイトカイゼン講座』などの著作がある。
この本で得られること
- AIは人の仕事を奪うが、AIによって生まれる仕事もある
- AIに出来ることは何なのか学べる
- 文系AI人材になる方法
内容はこんな感じ
AIとは何なのか?何が出来るのか?文系でもAI人材になれるの?英数国理社×AI時代に対応した、AI活用の現場から生まれた実践トレーニング。専門用語は最低限に留め、豊富な業種別事例を掲載。「自社での活用」のヒントとなる。「AIと共働き」するためのスキルを学べる一冊。
『文系AI人材になる』のコンセプト
『文系AI人材になる』は文系人材向けに書かれたAIを学ぶための本である。文系人材向けなので以下の点に留意して書かれている。
- プログラミングや統計・数理的なことの中身に触れない
- AIの専門用語を極力使わない
- できるだけ多くの事例を入れる
AIというと、プログラミングや、統計データ。小難しい専門用語を覚えなければ話についていけないのではないか?そんなように考える方も多いのではないだろうか。その点、本書では上記の配慮がなされているので、根っからの文系人間でも問題なく理解できるように書かれている。
目次
本書の目次は以下の通り。
- 第1章 AI社会で職を失わないために
- 第2章 文系のためのAIキャリア
- 第3章 AIのキホンは丸暗記で済ます
- 第4章 AIのつくり方をザックリ理解する
- 第5章 AI企画力を磨く
- 第6章 AI事例をトコトン知る
- 第7章 文系AI人材が社会を変える
序盤ではAIとは何なのか。続いて文系人間がAI人材になるための手段。そして後半では具体的なAI事例が多数紹介されている。
「AIは人の仕事を奪う」けれど
企業社会に急速に浸透するAI。AIの存在は人の仕事を奪うのではないか。自分の仕事はなくなってしまう。自分はいらない人材になってしまう。そんな不安をお持ちの方もおられるのではないだろうか。
AIは単純な作業や、人間が不得手な作業を代替する。これによって人間の仕事は確かに奪われていく。しかし失われる仕事がある一方で、かならず新たに生まれる仕事はある。それゆえに、今の仕事にしがみつくのではなく、AI職を目指すための準備を始めるべきだと主張する。
AIは優秀で、使いようによっては人間の仕事のかなりの部分を代替出来てしまう。しかしAIは単体では役に立たない。AIに管理、仕事をさせる人間はどうしても必要になってくる。文系人材はAIを作ることは出来ないが、使いこなすことは出来る。筆者は「AIはExcelくらい誰もが使うツールになる」と言う。この点に文系人材の活路がある。
AIに出来ること
人間とAIの共働きの段階図として筆者は以下のパターンを挙げている。
- 一型:人だけで仕事をする
管理業務、クリエイティブ業務など。
- T型:人の仕事をAIが補助する
AIにより補助される仕事。
接客、営業、教育、企画・執筆、ソーシャルワーク(介護)など。
- O型:人の仕事(不得意なこと、できないこと)をAIが拡張する
AIにより拡張される仕事
高度な専門業務(医療、法律、会計)、予測分析(アナリスト、マーケティング、トレーダー)など。
- 逆T型:AIの仕事(得意なこと)を人が補助する
AIを補助する仕事。
データ入力、電話応答、運転、運搬など。
- I型:AIだけで仕事をする
AIによってなくなる仕事。
注文、会計業務、監視業務など。
図示するとこんな感じ。
右に行くほど人間の関与する余地が減り、AI中心の業務となっていく。
筆者がおススメしているのはAIとの「共働き」である。AIは万能ではない。これからの人間はAIの不得意な部分をフォローしていくことが大切であるとしている。
また、AIのタイプは以下の4つに分類している
- 識別系:見て認識する(画像検閲、不良品識別、顔認証)
- 予測系:考えて予測する(ローンの審査、ネットワーク監視)
- 会話系:会話する(施設案内、注文代行、問い合わせ対応)
- 実効系:物を動かす(自動運転、データ入力、工場内作業)
上記の四つは更に代行型と、拡張型のいずれかに分類されるとしている。
- 代行型:人間の代わりに行う
- 拡張型:人間が出来ないことをAIによって出来るようにする
「文系AI人材」になるためには?
そして気になるのは、どうすれば「文系AI人材」になれるかであろう。「文系AI人材」になるためのステップとして筆者は以下を挙げている。
- AIのキホンを丸暗記する
- AIの作り方をザックリ理解する
- AI企画力を磨く
- AI時例をトコトン知る
AIのキホンとは、AIに関する最低限の知識である。本書の第三章ではその基本について学ぶことができる。AIとは何なのか。機械学習?ディープラーニングとは?この辺りは、現代社会では今後一般常識となっていく部分かと思われるので、読んでおいて損は無いだろう。
第四章ではAIの作り方を学ぶ。出始めの頃のAIはゼロから技術者が作っていたが、普及が進み、現在では既に提供されている仕組みを組み合わせることで実現が可能となっている。もちろん複雑な仕組みは開発者の力が必要だが、ちょっとした業務をAI化するのであれば文系でもなんとかなる時代になっている。
第五章、第六章ではAI企画力を磨くための手法と、先行しているAIの具体事例が提示されている。第六章の具体事例はなんと45事例にも及び、AIで何をしていいのか、AIで何が出来るのか。うまくイメージできていない方には、とても参考になるパートかと思われる。
AIは作れなくても使えればいい
冒頭にも書いたが、筆者の言葉を最後にもう一度引用しておこう。
「AIはExcelくらい誰もが使うツールになる」
現在のビジネスパーソンでExcelが全く使えないという方は居ないだろう。マクロは組めないし、VBAも使えない。その程度でもExcelは十分仕事の役に立つ。その程度でいいのである。
AIは作れなくても使えればいい。これからの未来、AIは確実に社会に浸透してくる。であれば、座して仕事が奪われるのを待つよりは、積極的にAIについての知識を身につけ、AIを使う側に回るべきであろう。そのための第一歩として本書は非常に有効である。