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『人工知能は人類を超えるか』松尾豊 AI(人工知能)についてサクッと学びたい方へ

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2015年刊行。筆者の松尾豊(まつおゆたか)は1975年生まれ。東京大学大学院工学系研究科人工物工学研究センター、技術経営戦略学専攻の教授。日本ディープラーニング協会の理事長も務めている。日本のAI(人工知能)研究では、よく名前が出てくる人物で、マスコミへの露出も多いので、ご存じの方も多いのでは?

人工知能は人間を超えるか (角川EPUB選書)

本日ご紹介する『人工知能は人類を超えるか』は、一般人向けに書かれたAI入門書として異例のヒット作となっており、2021年1月の時点で35刷136,000部発行となっている。書店の理工学書コーナーに行けば、かなりの確率で平積みされているはずだ。

この書籍から得られること

  • AI(人工知能)研究の歴史がわかる
  • ディープラーニングがなんだかわかる
  • AI(人工知能)に出来ることと出来ないことがわかる

内容はこんな感じ

AI(人工知能)の発展が著しい現在。AI技術を飛躍的に発展させた、最先端の技術ディープラーニングとは何なのか?一方で、発達しすぎたAIは「人類を滅ぼすのではないか」「人間の仕事を奪うのではないか」そんな危惧も持たれている。AIには何が出来て、何が出来ないのか?その歴史を紐解きながら、その可能性について解き明かしていく。

目次

本書の構成は以下の通り

  • はじめに
  • 序章 広がる人工知能―人工知能は人類を滅ぼすか
  • 第1章 人工知能とは何か―専門家と世間の認識のズレ
  • 第2章 「推論」と「探索」の時代―第1次AIブーム
  • 第3章 「知識」を入れると賢くなる―第2次AIブーム
  • 第4章 「機械学習」の静かな広がり―第3次AIブーム1
  • 第5章 静寂を破る「ディープラーニング」―第3次AIブーム2
  • 第6章 人工知能は人間を超えるか―ディープラーニングの先にあるもの
  • 終章 変わりゆく世界―産業・社会への影響と戦略
  • おわりに

AI(人工知能)と何なのか

ひとくちにAI(人工知能)といっても、何を指すのかは人によって異なる。専門家の間でも定まっていないのだ。まず最初にAI(人工知能)と何なのか。筆者の見解を示しておこう。

人工知能は「人工的に作られた人間のような知能」であり、人間のように知的であるとは「気づくことのできる」コンピュータ、つまりデータの中から特徴量を生成し現象をモデル化することのできるコンピュータという意味である。

『人工知能は人類を超えるか』p44より

また世の中的に人工知能と呼ばれているものを整理すると以下のようになる。

  • レベル1:単純な制御プログラムを「人工知能」と称している(エアコンの温度制御など)
  • レベル2:古典的な人工知能(人口無脳、お掃除ロボット)
  • レベル3:機械学習を取り入れた人工知能(ビッグデータをもとに自動的に判断)
  • レベル4:ディープラーニングを取り入れた人工知能(特徴表現学習が出来る)

昨今、世間を賑わせているのはレベル4のディープラーニングを取り入れたAIだ。ディープラーニングの登場で、AIの世界は飛躍的なブレイクスルーを遂げている。

AI(人工知能)冬の時代

本書の第2章~第4章ではAI(人工知能)研究の歴史が紹介されている。ざっくり書くとこんな感じ。

  • 第1次AIブーム(1950年代後半~1960年代):推論、探索の時代

⇒迷路や数学の定理証明など簡単な問題(トイプロブレムおもちゃの問題)は解けても、複雑な現実の問題は解けなかった。1970年代には冬の時代へ。

  • 第2次AIブーム(1980年代):知識の時代

⇒データベースに大量の専門家の知識を詰め込んだエキスパートシステムが登場。しかし膨大な専門家の知識を逐次コンピュータに取り込み、管理していくことが壁となり1990年代には衰退。

  • 第3次AIブーム(2010年~):機械学習・ディープラーニングの時代

⇒ビッグデータを利用した機械学習が活性化。ディープラーニングの登場でAI研究は飛躍的な進化を遂げ、現在に至る

ディープラーニングって?

現在、活況を呈している第三次AIブームを牽引しているのはディープラーニングの技術だ。まず人間の神経回路を真似することで学習を実現しようとする、ニューラルネットワークが登場。このニューラルネットワークを多層に積み重ねたものがディープラーニングだ。

ディープラーニングの凄みは、「注目すべきデータの特徴」すなわち、特徴表現学習を自分でやってしまえることだ。第2次AIブームは、膨大な知識を人間が管理・運用することの困難さが挫折の原因となったが、第3次AIブームでは、知識の獲得、特徴の把握を機械自身にやらせることでブレイクスルーを果たした。

人工知能は人間を超えるの?

シンギュラリティ(技術的特異点)とは、将来的にAIが発達し、自分自身よりも賢いAIを作れるようになった時点で、無限に知能の高い存在を作るようになり、人間の理解を超えた超越的な知性が誕生してしまうのではないかとする仮説を指す。

アメリカの思想家、未来学者であるレイ・カーツワイルは2045年にシンギュラリティが到来すると予想し、イギリスの理論物理学者、スティーブン・ホーキングは「AIの完成は人類の終焉を意味するかもしれない」とまで述べている。

シンギュラリティ問題に関する筆者の見解はこうだ。

人工知能が人類を征服したり、人工知能をつくり出したりという可能性は、現時点ではない。夢物語である。いまディープラーニングで起こりつつあることは、「世界の特徴量を見つけ特徴表現を学習する」ことであり、これ自体は予測能力を上げる上できわめて重要である。ところが、このことと、人工知能が自らの意思を持ったり、人工知能を設計し直したりすることは、天と地ほど距離が離れている。

『人工知能は人類を超えるか』p203より

そして、筆者がシンギュラリティを夢物語であるとする理由はこうだ。

その理由を簡単に言うと、「人間=知能+生命」であるからだ。知能をつくることができたとしても、生命をつくることは非常に難しい。

『人工知能は人類を超えるか』p204より

「生命」である点で、まだ人間は圧倒的にAIに対してアドバンテージを持っている。そして「生命」をつくり出すのはAIを作ることよりも遥かに困難だ。当面、人間がAIに征服されることはなさそうだが、あくまでも「現時点では」なのではあるけれど……。

AI(人工知能)について手っ取り早く知りたい方へ

ということで、松尾豊の『人工知能は人類を超えるか』について、ざっくりとご紹介させていただいた。

2015年刊行と、日進月歩ならぬ、秒進分歩のITの世界では、7年も前に出た書籍を読んでも最新の技術にキャッチアップできるのか?と疑問に思われるかもしれない。だが、本書ではAIの歴史についてや、AIの基礎的かつ普遍的な部分についての内容が多いので、2022年現在でも十分に有用な一冊ではないかと考える。

おまけ

松尾豊が出演しているインタビュー動画がいくつか上がっていたのでリンク。『人工知能は人類を超えるか』のエッセンスを抽出したような内容になっているので、手っ取り早く理解したい方はこちらが近道。

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