ビズショカ(ビジネスの書架)

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『ブロックチェーンがひらく「あたらしい経済」』 文系でもわかるブロックチェーン

ブロックチェーンの専門家が教えてくれる

2020年刊行。福岡を拠点としてブロックチェーン関連の技術開発を行っている株式会社Chaintope(チェーントープ)関係者による著作。CEOの正田英樹(しょうだひでき)をはじめとして、田中貴規(たなかたかのり)、村上照明(むらかみてるあき)、中城元臣(なかじょうゆきしげ)、安土茂亨(あづちしげゆき)の五名による共著となっている。

内容はこんな感じ

暗号通貨ビットコインの隆盛と共に知られるようになったブロックチェーン技術。全世界が注目し、各地で激しい競争が起こっているこの技術はいかにして生まれ、どのような仕組みで成りたっているのか。最先端の活用事例を紹介しつつ、ブロックチェーンの課題や改善点、そしてこれからの可能性について紹介していく。

ブロックチェーンの専門家が書いている

株式会社Chaintopeは、本書によると「2015年からブロックチェーンに関する研究や実証実験を開始し、国内外の様々なブロックチェーンプロジェクトのシステム開発やコンサルティングを行ってきた」とあり、かなり早期からブロックチェーン技術に注目していた企業である。

業界人が書いた書籍はえてして、当該団体の実績アピールや、利益誘導に走りがちで、我田引水的な側面が強いことが多いのだが、本書に関しては自社の宣伝色は薄め。というかほとんどなく、真摯にブロックチェーンについての紹介、解説に振り切っている点は好感が持てる。

本書では、各章の冒頭に「エグゼクティブ・サマリー」と「用語解説」が提示されており、読む側にとってはありがたい。各章を読み終えた後に、この部分を読み返すと、更に理解が深まる。要点だけ知りたいという方は、この部分だけをつまみ食いしても良いだろう。

それでは以下、簡単に概要を振り返っていきたい。

ブロックチェーンの有用性は?

第一章は「ブロックチェーン技術の可能性」と題して、ブロックチェーンは「価値を交換できる基盤」であるとして、その有用性を説いていく。

これまで通貨は国家や大企業が中央集権的に管理するものであったが、ブロックチェーンの技術を使うことで分散型の仕組みで管理できるようになる。これによって、国家の統制が弱いアフリカ諸国のような地域とも取引が出来るようになる。また、分散型であることでGAFAのような巨大資本に個人の情報を握られずに済む。

日本経済新聞の2019年5月22日の記事によると、ブロックチェーンの日本国内での活用は2019年度時点で171億円程度。これが2022年には1235億円にまで伸びると予想している。3年間で7倍の成長が想定されているのである。それ程までに期待の大きい技術なのである。

ブロックチェーンの具体的な使われ方

第二章では「ブロックチェーンの社会実装事例」 として、これからどのような活用方法が考えられるのか。その可能性の一端が紹介されている。

以下、掲載例を挙げる。

  1. 地域コイン・企業コイン
  2. コミュニティコイン
  3. 電力の産地価値証明
  4. サプライチェーンのトレーサビリティ
  5. 二酸化炭素排出量削減化の可視化とカーボン・オフセット
  6. 不動産の権利管理
  7. 学歴や資格の記録
  8. 記事の価値の可視化
  9. IOT機器のプログラム保証
  10. 人に紐づく履歴の管理
  11. 契約の自動化、契約書の共有、保管、電子契約
  12. 行政サービス利用手続きのペーパーレス化
  13. 人と人との関係性の可視化とMasachain

ただ、日本ではどうしても新しいIT技術に厳しい法規制がかけられがちである。日本の官公庁の時間軸では、こうした導入検討、法整備には少なくとも二年は必要であろうとしており、世界の潮流に乗り遅れる危惧を表明している。

ブロックチェーンで何が変わるのか

第三章では「ブロックチェーンが切り開くあたらしい経済」として、ブロックチェーンが経済に及ぼす変化について説いていく。

信頼できる金融機関が存在しない発展途上国でも、銀行を介さず仮想通貨で決済が出来るようになる。トークン・エコノミーの普及により、所有権を分割して小口、大人数で共同所有できるようになる。

中央集権的な管理から、記録分散して各自でデータを持つことによってさまざまなことが出来るようになる。特に所有権の分割による、共有の流れは加速化していきそうに思える。個人では手が出ない高価な物件でも、分割すれば権利の一部を所有できるかもしれない。この点は魅力的であると感じた。

金融や、不動産の分野での普及が待たれるところだが、日本ではこういうのはなかなか進みそうもない気はする。

ブロックチェーンの歴史

第四章では「もっと分かるブロックチェーン」と題して、ここでようやくブロックチェーンの歴史と仕組みについての解説が入る。

2008年にサトシ・ナカモトの名義で発表された「ビットコイン:P2P方式電子通貨システム」と題した論文兼目論見書がブロックチェーンの始まりとされる。

このサトシ・ナカモトは匿名であり、実在する人物なのか、そもそも個人なのか団体なのか?日本人であるのかどうかも定かではない伝説の存在である。こうした謎めいた出自が、ブロックチェーンの仕組みを胡散臭く見せてしまう一面があるのだが、逆にそれだからこそ魅力的に思えてしまう側面もある。

第四章以降は、少しだけ専門的な話になるが、頑張って読めば文系でもなんとかついていけるレベルの内容ではないかと思われる。

ブロックチェーンの未来と課題

最終章では「ブロックチェーンが抱える課題と解決法」が示される。今後、ブロックチェーンが世界的な普及を遂げていく中で、どのような問題点があり、それはいかにしてクリアされていくべきなのかが解説されていく。

分散型の仕組みは、データを多くの場所で同時に持つことを意味し、全体的なデータ量は想像を絶する量になり、通信インフラの圧迫にも繋がる。偽造や不正に対して、信頼性とセキュリティをいかにして担保するかも大きな課題となるだろう。

とはいえ、既にはじまってしまったブロックチェーン普及への流れは止まらないだろう。引き続き、注視していきたい魅力的なテーマではないかと思われる。

 

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