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『人は話し方が9割』永松 茂久 話し方の基本は「共感と寄り添い」

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2020年年間ランキング1位のビジネス書

2019年刊行。筆者の永松 茂久(ながまつしげひさ)は1974年生まれ。サラリーマンからたこ焼き屋に転身。これが見事に成功し、数多くの飲食店を展開。その過程で、多数のビジネス書、自己啓発書を世に送り出している人物である。

本書は2020年年間ランキング1位(日販・ビジネス書/TSUTAYA・書籍総合)、さらに 2021年上半期ビジネス書ランキング1位(日販、トーハン)。「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」で特別賞を受賞している。

「〇〇が9割」というタイトルは、2013年の佐々木圭一『伝え方が9割』あたりから使われるようになったと思うのだけど、すっかり常用されるようになった。本書の成功はこのタイトルにもあるんじゃないかな。

なお、『人は「話し方」で9割変わる』という本も出ているが、全く別の書籍なので注意しておきたい(しかし、この本の方が先に出ている)。

この本でわかること

  • 「話す力」より「聞く力」を磨く
  • 大切なのは「共感と寄り添い」
  • 苦手な相手とは無理に話さなくていい

内容はこんな感じ

何を話していいのかわからない。どう相手に伝えたらいいのかわからない。うまく話せずに失敗した。相手を怒らせてしまった。思っていることを正直に言えない。人とコミュニケーションをとるのが苦手な人に読んで欲しい「会話術の基本」。話し方をちょっと変えるだけで仕事もプライベートも好転する!

目次

本書の目次は以下の通り。

  • 第1章 人生は「話し方」で9割決まる
  • 第2章 「また会いたい」と思われる人の話し方
  • 第3章 人に嫌われない話し方
  • 第4章 人を動かす人の話し方

一番大切なのは第1章である。話し方にコンプレックスがある方はまずこの章だけでも読んでおくと良いだろう。基本的な考え方は全て第1章で説明されている。

第2章以降は、その応用編である。順を追ってステップアップしていきたいところである。

流暢に話せるための本ではない

まず最初に知っておきたいことだが、本書『人は話し方が9割』は流暢にペラペラと、立て板に水の如く会話が出来るようになる本ではない。噺家やお笑いタレント、ベテラン営業マンのような会話の達人になろうという本ではない。

また、苦手な人、キライな人と話せるようになるための本でもない。本書は日常のコミュニケーションを改善することで、身近な人との関係性を改善するための本である。

大前提としてこのことは抑えておきたい。

人は自分のことを分かってくれる人を好きになる

会話において一番大切なことは何だろうか。筆者は「話す力」よりも「聞く力」が大切であると説く。会話の基本は「共感と寄り添い」である。

あなたは会話の際に自分の事ばかりを話していないだろうか。無言の時間は誰にとっても怖い。しかし相手の言葉を遮り、自分だけが話し続けるのはNGである。筆者は普通の人が簡単に話せるようになる「3つのコツ」として以下を挙げている。

  • 否定しない
  • うなづく
  • プラストーク(褒める、感動させる)

人は誰もが自分のことが一番大切、自分に一番興味がある。認めてほしい。わかってほしいものなのである。そのため、人間は自分を理解してくれる人のことを好きになる。「3つのコツ」を上手く使いながら、まずは相手に話せることが大切になってくるわけだ。

相手に9割喋らせる方法は?

とはいえ、相手には話させたい!と思っても、慣れないうちは難しいだろう。相手に話を続けてもらうには、それなりのテクニックが必要になる。本書では相手の話を「広げる」ためのテクニックとして以下の「拡張話法」を提案している。

  • 感嘆:相手の話を聞いた時に受ける感銘の表現
  • 反復:相手の話を繰り返す
  • 共感:感情をこめて理解を示す
  • 賞賛:相手を評価する
  • 質問:相手の話を中心に展開させていくためにその後を追いかけて聞く

また、相手に気持ちよく話してもらうための「聞き方」の基本として「3つの表情」を提唱している。

  • 顔の表情
  • 声の表情
  • 身体全体の表情

要は仏頂面で聴くのではなく、自分はあなたに興味を持っているのですよ。共感しているのですよと形(顔、声、ボディアクション)に出して示すことが重要。

「拡張話法」と「3つの表情」を使って、まずは「聞き役」に徹し、相手に話をさせて「共感と寄り添い」を示す。これが会話の基本なのである。

苦手な人と無理に話す必要はない

会話が不得手であると認識している人間にとって、気になるのは苦手な相手とどう話すかではないだろうか。本書ではこの点、非常に割り切っている。

「会話の難しい人との距離を無理に縮めなくていい」

会話が苦手な人間は、まずは話しやすい人との会話量を増やして会話力を上げることに注力すべき。苦手な相手との距離を詰めるのはまだ早い。沈黙でもいい。とりあえずニコニコしてその場をやり過ごせ。というのである。

苦手な相手に無理にコミュニケーションを図って失敗体験を重ねるよりも、会話が容易な相手との間で成功体験を積み上げた方が良いのは十分に理解できる。

「話し方」でメンタルが変わる

 

本書では会話において「共感と寄り添い」の姿勢が肝要であることを再三示す。話し方のスキルを上げるのは、小手先の会話法ではなく、相手を「尊重する心」なのである。心が変われば話し方も変わる。話し方が変われば人間関係にも良い影響が出てくる。

話し方が上達すれば、いずれは苦手な人、嫌いな相手ともコミュニケーションが取れるようになってくると本書は説く。筆者は最終的に、苦手な人、嫌いな人はいなくなるとまで明言しているのだが、なかなかそこまでの領域に達するのは難しいか。

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