ビズショカ(ビジネスの書架)

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『逃げる技術 ギリギリまで我慢してしまうあなたへ』根本裕幸 辛いときはいますぐ逃げていい!

人気カウンセラーが教える「逃げる技術」

2020年刊行。筆者の根本裕幸(ねもとひろゆき)は1972年生まれの心理カウンセラー。

メンタル系の自己啓発本を多数上梓しており、代表作は2017年の『敏感すぎるあなたが7日間で自己肯定感をあげる方法』。

内容はこんな感じ

いつまでこの辛い日々が続くのか。ずっと我慢していなくてはいけないのか。あなたの人生は自分で決めていい。過酷な環境からは、後先考えずにいますぐ逃げていい!「逃げる技術」は人間らしさを取り戻す技術。予約三か月待ちの人気カウンセラーが教える、最強の逃避メソッドの数々。「もう少し頑張れる」と思う前に、読んでおきたい一冊。

本当にヤバくなる前に読みたい

仕事や学業、恋愛関係、家族、ネットでのコミュニケーション。過酷な業務環境、拗れてしまった関係から抜け出すのは容易なことではない。自分が耐えていれば良いのではないか。もう少し頑張れば事態が好転するのではないか。今さら辞めるのは無責任!とかく、辛い環境下にあっても人間は我慢をしがちである。しかし、精神をすり減らす日々は健全な生活を蝕んでいく。身心の健康を犠牲にしてまで耐える必要はあるのか。

本書では「逃避は新しい世界に移行するチャレンジである」とする。どうして逃げられないのか、逃げるにはどうすればいいのかを、具体例を交えながら読み解いていく。

なお、わたし自身経験があるのだが、精神的に追い詰められてくると本書のようなノウハウ本は、全く受け付けなくなってくる。出来うるならば、本当にヤバくなる前に読んでおくことをお勧めしたい。

では、今回もいつものように各章ごとに内容を紹介していこう。

逃げられない理由を考える

第一章は「なぜ逃げられないのか」として、人間は辛いのにどうして逃げることが出来ないのか。さまざまな要因を紹介していく。

真面目な人間、優秀な人間、責任感のある人間ほど、逃げることには抵抗があるものである。頑張る自分が好きであったり、期待に応えたい気持ち、意地とかプライドの問題、自己犠牲の精神、その理由はさまざまである。

本書ではそれぞれの理由に対して、「逃げていい」理由を提示していく。

特に印象に残ったのは、周囲の期待に応えたいという気持ちは「他人軸」であるとした点。判断の基準を他者に置いてしまった時点で自分が失われ、奴隷的な存在に自らを貶めてしまっている。他人がどう思うかではなく、自分がどう思い、感じているかを優先しようという提案には納得感がある。

どうして逃げなければならないの?

第二章は「あなたは今すぐ逃げていい」である。この章では、「逃げる」とは何なのか。どうして「逃げる」必要があるのかが示される。

逃げられないでいる理由を認識しながらも、「逃げる」行為にまで踏み切れないでいる人間に対して、さらに一歩踏み込み、「逃げる」理由を教えてくれる。

心理学ではの「逃げる」は、「今感じている感情から意識を逸らし、感じないようにすること」であるとして、時には自分や大切な存在を守るために「逃げる」選択肢もアリなのだと説いていく。

この章で面白かったのは一連のアファメーションである。アファメーションとは、肯定的な言葉を自らの内面に向かって語り掛ける行為を指す。本書では「逃げる」ためには、罪悪感や自分の弱さをまず自覚することが肝要であるとして、

  • 逃げてもいい
  • 弱くても大丈夫。弱くてもいい

と、声に出して毎日繰り返すアファメーションが大切であると主張する。

アファメーションは話だけ聞くとバカにしがちだが、実際にやってみると意外に効果があるので、わたし的にもおススメ。思うだけでは具体化しなかったものが、口に出すことで形になっていくのだ。気持ち的にも意外にスッキリする。

「頑張らない」を選ぶ

第三章は「考えない、思い込みを手放す」である。美徳とされがちな「頑張る」という選択肢。「頑張る」教への信仰は特に日本人にとっては強固であるようで、自らの弱さを認識できてなお、「頑張る」を捨て去ること事には強い抵抗がある。本章ではその内なる抵抗勢力と向き合う方法が提示されている。

「頑張る」はあくまでも特別な時に発揮される考え方であって、常時「頑張る」が要求される環境は、そもそもの前提として無理がある。

意地やプライド、他人からの評価、理想主義、罪悪感から逃れ、「頑張る」を捨てる。捨てるとまではいわなくても一時的に「頑張る」から離れてみる。他人軸での評価を捨て去り、まず自分がどう思っているのかを考える。自分軸を確立すべきであると筆者は云うのである。

この章で気になったのは、緊張関係にある「相手」への接し方である。逃げたくなる辛い環境には、往々にして対象となる相手がいるものである。そんな対象者との関係性において、本章では、競争から離れる、負けてあげる、戦わない、争わない姿勢が大事だと説く。そのポイントは四点。

  1. 相手に常に感謝の気持ちを伝えること
  2. 相手の長所や魅力、価値を常に見つめ、伝えておくこと
  3. お互いの将来についてヴィジョンを描くこと
  4. 自分がほんとうに望む関係性についてコミュニケーションをとること
『逃げる技術』p156より

正しいことを言っているのは理屈ではわかるかなあ。

しかしこれは、かなり難しそうである。逃げたくなる程に関係性が悪化している相手に対して、この姿勢を維持するのは相当な努力と精神力が必要なのではないだろうか。

技術としての「逃げる」

そして第四章はようやく「逃げる技術」である。ここでは、前三章での学びを踏まえ、実際にはどのような「逃げる技術」があるのかが紹介されていく。

「逃げる」と一言で言ってもその手法は様々である。距離を取る、かわす、諦める、別れる、手放す、人に頼る、辞める、撤退する、選ぶべき技術はいくつもある。それは時と場合、各人の状況によっても変わってくるだろう。

上記の中で、わたし自身がこれはと思った技術は「かわす」であった。

困難な問題を正面から受け止めるのではなく、一歩引いた位置から俯瞰してみる。「ああ、この人はそういうふうに思うんだな」と客観的な視点で事態を見直す。これにより見えなかった問題点が見えてくる。当事者になってしまうと、どうしても第三者的な目線で物事を捉えるのは難しくなっていく。それだけに一歩下がって「かわす」能力は有効なのではないかと思われる。

そしてこの章で最後に示される技術が「選択する」である。これは本書の総まとめとも言える知見である。追い詰められてくるとどうしても選べる手段が限られてくる。もう何も打開策が見つからない。そんな事態に陥ることも多いだろう。しかし、本書で示された「逃げる」技術を駆使することで、気づかなった選択肢が見えてくる。

自分で考え自分で「選択する」ことが出来る。選ぶ余地があることは安心感に繋がる。心のゆとりも生まれてくるわけである。

異なる視点で助言をもらう

最終章は「ほんとうのあなたを手にする自由」である。問題点をより俯瞰しやすくするためとして、第三者から助言を得ることを強く勧めている。

新たな解決策を見出すには、異なる価値観や、視点を持つ人物からのアドバイスが役に立つこともあるだろう。

  • 違う世界の住人と出会う
  • 自分とは年代が違う人と話をしてみる
  • 外国人、もしくは海外に長く住んでいた日本人と話をしてみる
  • 経験豊富なカウンセラーやコーチ、コンサルタントと出会う

「経験豊富なカウンセラーやコーチ、コンサルタント」は我田引水っぽい(笑)気もするが、状況によってはプロの力を借りることも十分アリだ。

まとめ:選択肢としての「逃げる」

どんなにつらく苦しくても困難には立ち向かうしかない。この環境は変えられない。

一見、逃げ場が無いような状態でも、一歩引いて俯瞰してみることで選択肢が見えてくることがある。自分の中の思い込みや既成概念の壁を取り払ってみたいと願う時、本書は有効な手段を教えてくれるのではないかと考える。

実際に「逃げる」手段を取らなくてすら良いのだとわたしは思う。いざとなったら逃げてもいい。そうやって心の中に退路を作っておくことだけで、気持ち的にはかなり楽になるのではないだろうか。

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