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『独裁者のデザイン ヒトラー・ムッソリーニ・スターリン・毛沢東の手法』松田行正 デザインは毒にも薬にもなる

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独裁者によるデザイン、シリーズ三作目

2019年刊行。筆者の松田行正(まつだゆきまさ)は1948年生まれのグラフィックデザイナー。

ヒトラー、スターリンなどの独裁政権によるデザインについて言及した一連のシリーズの三作目であり、本作に先立って2017年の 『RED ヒトラーのデザイン』、2018年の『HATE! 真実の敵は憎悪である。』が上梓されている。うーん、読む順番間違えたかも。

本書の小口部分は、左に広げるとスターリンが、右に広げると毛沢東の肖像画浮かび上がる凝った趣向になっている。読み進めていくとスターリンや毛沢東の呪力のある視線と目が合ってしまうのだ(笑)。

なお、2022年に河出文庫版が登場している(文庫だけど1,500円もする!)。現在読むならこちらかな。

独裁者のデザイン : ヒトラー、ムッソリーニ、スターリン、毛沢東の手法 (河出文庫)

前著である 『RED ヒトラーのデザイン』や『HATE! 真実の敵は憎悪である。』を飛び越して、本書だけが文庫化されているのは何故なのか。。

内容はこんな感じ

国は違えども、独裁者として君臨した政治家たちが好んだデザインには共通の要素がある。敵対者を悪しざまに罵り、都合の悪い部分は隠蔽し、耳障りの良い言葉だけをちりばめる。個人崇拝。情報の遮断。ヒトラー、ムッソリーニ、スターリン、毛沢東。豊富な事例を元に、独裁者たちのデザインの傾向を振り返る。

目次

本書の構成は以下の通り

  1. 呪力のある視線
  2. 燃える視線
  3. 拒否する視線
  4. 遠望する視線
  5. 反復する視線
  6. 記憶する視線

プロパガンダ・デザインの特徴

本書では、第二次大戦から、冷戦期にかけて、ドイツ、イタリア、ソヴィエト、中国におけるプロバガンダの手法を紹介している(少しだけだがアメリカや日本の事例もある)。個人崇拝の強制や、敵対する思想への弾圧、憎悪を掻き立てようとする扇動力など、この時代ならではのシンプルで力強いデザインが実に印象的である。

独裁国家のプロパガンダ・デザインの特徴として、本書では以下を挙げて章立てて解説を試みている。

・呪力のある視線
・燃える視線
・拒否する視線
・遠望する視線
・反復する視線
・記憶する視線

収録されている図版の数が多く、カラーのものも多いので、パラパラとみていくだけでも相当なインパクトがある。

テレビがなかった時代、プロパガンダの手段としてポスターの力は絶大であったのだろう。独裁者政権が世に送り出したポスターの数々は、内容的には一片たりとも容認できるものではないのだが、強烈な訴求力があることは認めざるを得ない。デザインとしては非常に優れた内容なのだ。

具体例としてはこちらが参考になるかな。

プロパガンダを手掛けたデザイナたちのその後

巻末には付録として、ナチスドイツのプロパガンダポスターのデザイナたちが紹介されている。

戦後も連邦報道局のポスターデザイナとして活躍したハンス・シュヴァイツァー。ソヴィエト軍の捕虜となり、共産党のプロバガンダに協力させられたフェリックス・アルブレヒト。訴追されることもなく、戦後もグラフィックデザイナとして活躍したルートヴィッヒ・ホールヴァイン等々、デザイナとして優秀すぎたために、戦後も罪を問われずその才能を発揮していたことはなんとも皮肉な事態である。

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