戒名の事が気になって
2006年刊行。筆者の保坂俊司(ほさかしゅんじ)は1956年生まれの宗教学者。本書執筆時は麗澤大学の教授だったが、現在は中央大学の教授。専攻は比較宗教学、インド思想。戒名「行俊」。
まず最初に誤植多すぎでゲンナリ。ですます調で書いてあるのに、突然である調になったりと、文章も落ち着かない。新書ブームが勃興していたころで、祥伝社新書は2005年に刊行されたばかり(当時)。刊行間もない頃で、まともな校正が機能していなかったのか?もう少し校正ちゃんとしてあげないと、著者も読者も可哀そう。
内容はこんな感じ
仏式の葬儀には戒名が付き物。しかしその本来の意味は「仏教信徒が出家の際に授かる名前」なのだ。生前に真剣に仏教を信仰していたわけでもない人間が、どうして死後に戒名を授かることが出来るのか。日本独特の仏教の受容形態と、それが変容していく過程を紐解きながら、日本人の死生観に迫っていく一冊。
目次
本書の構成は以下の通り。
- まえがき
- 第一章 戒名とはなんだろうか
- 第二章 仏教史から戒名を考える
- 第三章 日本人の霊魂観と戒名
- 第四章 墓や位牌と戒名
- 第五章 戒名は必要か?
- あとがき
うちの親の場合超適当だった
わたしの実家の例で恐縮だが、十数年前、父が他界した際に、信じられないことに母が「お父さんの宗派わかんない」と言い出した。都市部住まいで、菩提寺の無い核家族としても、これはかなり恥ずかしい事態である。
すったもんだした挙句、結局「いちばんいい戒名を安くつけてくれる」宗派に落ち着いたのだが(←ヒドイ)、もう少し知識があればと反省しきり。父の葬儀が終わって、落ち着いた頃に、少しでも戒名について知ることが出来ればと手に取ってみたのが本書なのだった。
戒名から読み解く葬儀の歴史
帯を見ると、戒名の構造は?、誰がつける?、つけるタイミングは?、相場はいくら?、ないとどうなる?みたいなことがずらっと書いてあって、一見して、実用的な雑学本のように思えるのだが、それは第一章だけ。実際には戒名という切り口から見た日本葬送史。西暦538年の伝来から、神道と習合し日本的な変容を遂げた仏教の姿についてつまびらかにしていく。
戒名は庶民に仏教を伝えるための方便として始まった
自然発生的で系統立った理論が無いだけに死穢に対して無力であった神道。高度に洗練された理論と、埋葬に対しての複雑なノウハウを持つ仏教は、死穢におののく古代の日本人に取って画期的な救済者であったというのが序論。
本来は出家して真面目に修行をしなくては救済が無かった筈なのに、そんな金も暇も無い庶民に教えを広めるためにはそれでは駄目。それでも仏教は広めたい。それならば代替措置として、葬儀の前に戒名を授けてしまえば出家扱いで僧籍に入れることが出来、立派に成仏できるじゃん!という画期的アイデアの元で日本独特の死後の戒名授受は始まったらしい。
他宗派から見たら異論もありそう
ユニークな視点での仏教史で読んでいてとても興味深かったが、いかんせん仏教側の立場からの指摘なので、神道側の人間からはかなり文句が出そう。キリスト教やイスラムの人も怒りそうだなあ。根拠の無い断定も多いので、そのまま信じるのは危険かも。
自分的には死後の救いも、輪廻思想も信じていないので、戒名イラネ派だったりするんだけどね。
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