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『格差社会―何が問題なのか』橘木俊詔 格差社会について知るために

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格差社会に早くから着目していた著者の格差論

2006年刊行。筆者の橘木俊詔(たちばなとしあき)は京大大学院の教授(刊行時)。その後2007年に定年退職され、現在は同大の名誉教授。2005年度の日本経済学会会長職を務めている。

格差社会―何が問題なのか (岩波新書)

本書以外にも1998年に格差社会論の嚆矢とも呼べる『日本の経済格差』を上梓している。格差社会系の著作が多い人物である。

この本で得られること

  • 格差社会がどうしてできたのかが分かる
  • これかの格差社会について知ることが出来る
  • 格差社会の処方箋について知ることが出来る

内容はこんな感じ

「格差社会」この言葉が人口に膾炙するようになって久しい。バブル崩壊から90年代の停滞期にかけて、この国ではいったいどのような事態が進行していたのか。構造改革のもたらしたもの。機能しない所得分配システム。機会の不平等。格差が拡大していく社会。果たして有効な処方箋はあるのか。経済学の第一人者が示す現状と打開策。

目次

本書の構成は以下の通り

  • 第1章 格差の現状を検証する
  • 第2章 「平等神話」崩壊の要因を探る
  • 第3章 格差が進行する中で
  • 第4章 格差社会のゆくえを考える
  • 第5章 格差社会への処方箋

日本では富の再分配が機能していない

先進国の中で、富の再分配システムがこれほどまでに機能していないのは日本と米国くらいなのだそうだ。高所得者にひたすら有利に改訂されてきた相続税と所得税の優遇措置にはひたすら萎える。

でも、結局再分配がうまくいっている北欧諸国はどうしてるかっていうと、税金がものすごく高いのである。現状をどうやって打開するのかとなると、つまるところ対策は税金を上げるしかないという話になる。累進度が下がる一方の所得税負担はいい加減元に戻すべきだと思うのだが、政府がそんな政策を断行できるとは思えない。

本書刊行後、消費税の税率は上昇を繰り返している。現在のコロナ禍を受けて今後、税金は増える一方なのだろうと暗澹たる気持ちにさせられる。

ちなみに、格差社会を論じた本は山ほどあるが、本書はその中でも比較的先駆け的な一冊である。タイトルのインパクトだけで話題になった三浦展の『下流社会』あたりと比べると、非常に判りやすく、納得感もある。格差社会を知るための入門書としては良いかもしれない。

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