安倍晋三に影響を与えた一冊
2004年刊行。筆者の山内昌之(やまうち まさゆき)は1947年生まれの歴史研究者。専門はイスラム地域研究と国際関係史。本書刊行当時は東京大学大学院の教授。現在は東京大学の名誉教授、武蔵野大学国際総合研究所特任教授。政府系機関、内閣官房、外務省等の委員にもなっており、幅広い分野で活躍している人物である。
Wikipedia先生を見てみると著作数が凄い。イスラーム、中東世界を中心として、堅めの内容から、かなり砕けた読み物的な作品まで(本書は後者に該当する)、数多くの著作を上梓している。
『嫉妬の世界史』は安倍晋三が総理になる前に読んだ書籍として知られている(Wikipediaでは要出典となっていたので、出典は辿れていない、スミマセン)。この本を読んで、どんな感想を抱いていたかのか知りたいものである。
ちなみに法学者で、一橋大学の学長を務めている山内進(やまうちすすむ)は実弟である。
内容はこんな感じ
人間誰しもが持ち得る感情「嫉妬」。自分と同等、もしくは自分より劣ると見なしていた人物が予期せぬ評価、賞賛、愛情を受けたときに感じる気持ち。歴史上の偉人たちにとってもそれは例外では無い。英雄たちの嫉妬は時に一国を傾け、またある時には屍山血河を築く。凄惨極まりない嫉妬の数々を、歴史の事例を紐解きながら紹介する。
男の嫉妬は怖ろしい
歴史の先生が豊富な知識のストックから、史上名高い「嫉妬」の数々をコラム風に紹介していくの本書である。徳川慶喜と勝海舟。島津義久と義弘の兄弟。ヒトラーとロンメル。中大兄皇子と大海人皇子。登場するのはほとんどが有名人ばかりなので、とっかかりは非常に良い。
ちょっと時間が開いた時にサッと読むには丁度いい感じの作品である。歴史好きの人間なら楽しく読める一冊だろう。かなり軽めのタッチなので、歴史はちょっと苦手だなという方でもいけると思う。比較的有名な人物ばかりをとりあげているので、手に取りやすいのではないかと。
森鴎外のイメージが変わる
一番面白かったのは森鴎外に関するエピソード。軍医という極めて特殊な狭い世界で、日々積み重なっていく鬱憤を、文学の世界でてらいもなく晴らしていくその恐るべき妄念。限りなく逆恨みに近い場合もあったようで、高潔な文学者のイメージがガラガラと崩れていくのであった。思いがけない雑学を仕入れる事が出来るのも新書読みの楽しみの一つだ。
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