夏野剛がケータイの未来を予測
2006年刊行。著者の夏野剛(なつのたけし)はNTTドコモの執行役員(当時)。松永真理に引き抜かれてドコモに入った人物で、iモードを立ち上げた「七人の侍」の中の一人。1997年にドコモに入り、2008年にドコモを去っている。
本書はドコモのような保守体質の強い会社に、ベンチャー上がりの人物が外様で入って執行役員にまでなった人のプロバガンダ本である。
この本で得られること
- 2000年代中頃の日本のケータイ業界の動きがわかる
- 夏野剛という人物のキャラクターがわかる
- 現在の日本のケータイ業界の凋落ぶりが悲しくなる
内容はこんな感じ
「iモード時代は終わった」。NTTドコモの執行役員。かつてiモードを立ち上げた男は最近こんな話し方をしている。世界にも稀な携帯電話によるネットビジネスは新たな局面を迎えようとしていた。市場の成熟化。競合するKDDI、ソフトバンクの追い上げでじりじりとシェアを減らしているドコモが次に打つ手とは何なのか。キーマンが語るこれからのケータイの姿。
パケット収入からお財布ケータイへ
通話料で儲けて、パケット代で儲けて、そろそろ収入源が先細りになってきたドコモが、次はクレジット事業で儲けますよというお話。idとDCMXの違いがやっと分かった。あっさり三井住友と提携を決めてしまうあたりはさすがだが、クレジット業界では後発になるドコモがどこまでやれるかは見物だ。
本書が書かれて15年が経過するが、金融部門へのドコモの進出はd払い、dポイント、idとの提携などもあって、それなりに存在感は持てているように思えるが、根っこの部分がお上品な元国営企業だけあって、PayPayみたいになりふり構わずしかけてくる会社には水をあけられている印象がある。
課題は海外戦略
とはいえ、国内では技術的にも、戦略的にも当面ドコモの優位は動かないと思う。いくらKDDIやソフトバンクが伸びていてもね。半分のシェアを握っている先行メリットは大きい。問題は圧倒的に後れを取っている海外でどう巻き返すか。日本のサービスや端末は高機能過ぎて、実は世界ではまったく戦えていないのが現状だったりする。
このままだと日本特殊論で終わってしまいそう。これからの十年二十年先を考えると不安は尽きない。あくまでも夏野剛は強気だけど、こと、海外を舞台に考えてみると日本のIT企業の存在感は皆無なわけで……。
その後KADOKAWAの社長にまでなってしまった夏野剛に、現在の心境を聞いてみたいところではある。
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