今週のお題「読書の秋」。本日ご紹介するのはこちら。
斎藤美奈子、初期の代表作
筆者の斎藤美奈子(さいとうみなこ)は1956年生まれの文芸評論家。デビュー作は1994年の『妊娠小説』。
余談ながら「紅一点」が北宋の政治家にして詩人王安石の詩の一節、「萬緑叢中紅一点」に典拠を持つものであったことは恥ずかしながら本書で始めて知った次第。
もともとは1998年にビレッジセンター出版局より刊行されていた作品。
その後2001年にちくま文庫版が刊行されている。二十年前の著作だが、現在でも新本として入手可能で、長く売れ続けている作品と言える。
この本で得られること
- 「男の中に女がひとり」という構図はどうして作られるのかがわかる
- 物語世界から当時の社会のジェンダー感を知ることが出来る
内容はこんな感じ
子供向けのアニメ、特撮ドラマ、伝記作品の多くは「大勢の男たちとごく少数の女性たち」で構成されている。女の子の座れる席は一つしかない。それは現実社会の縮図なのか。明治期以降の諸作品を振り返りながら、紅一点ヒロインの時代による変遷をたどり、周辺社会の様相を鋭く喝破する。
目次
本書の構成は以下の通り
- 紅一点の国(アニメの国;魔法少女と紅の戦士;伝記の国 ほか)
- 紅の勇者(少女戦士への道―『リボンの騎士』『ハニー』『セーラームーン』
- 組織の力学―『ヤマト』『ガンダム』『エヴァンゲリオン』;救国の少女―『コナン』『ナウシカ』『もののけ姫』 ほか)
- 紅の偉人(天使の虚偽―フローレンス・ナイチンゲール;科学者の恋―マリー・スクロドフスカ・キュリー;異能の人―ヘレン・ケラー ほか)
明快でわかりやすいが……
男の子向けアニメ⇒モモタロウ文化⇒軍事大国。女の子向けアニメ⇒シンデレラ文化⇒恋愛立国。ヤマト⇒高校野球部。ガンダム⇒全共闘。エヴァンゲリオン⇒腐った家族。と、終始一貫して断定口調なのは、非常に乱暴ではあるが、わかりやすいのは確か。
本書を読むのは当然アニメオタクばかりじゃないから、こうやって多少無理矢理でも判りやすい例えにしてくれると一般の人間でも判りやすく内容を掴める。この明快さは斎藤美奈子の魅力と言えるだろうけど、危うさでもあると思う。
いにしえの『リボンの騎士』から最新作(当時)『もののけ姫』まで、何が何でもな紅一点視点で強引に斬りまくった分析の数々は面白かった。バラバラに散らばっている事象を一定の法則で並べ直したら、今まで見えなかった事実が見えるようになって、目から鱗が落ちたような感覚。
昨今隆盛の「女の中に男が一人」系の緑一点、女の子てんこ盛りアニメはどう分析されるのか、ちょっと聞いてみたいところだ。