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『しのびよるネオ階級社会』林信吾 “イギリス化”する日本の格差

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英国事情通が説く、ネオ階級社会

2005年刊行。筆者の林信吾(はやししんご)は1958年生まれの作家、ジャーナリスト。1983年に渡英。欧州ジャーナルの編集長を経て1993年に帰国。その後は、イギリス滞在の経験を生かし、作家・ジャーナリストとして活躍中。

しのびよるネオ階級社会 (平凡社新書0267)

続編的な立ち位置の著作として、2007年の『ネオ階級社会を待望する人々』。

更に2010年の『ネオ階級社会はここから始まった 1974年、見過ごされた転換点』がある。

この本で得られること

  • イギリスの階級社会について知ることができる
  • 日本の「階級社会」の形成について知ることが出来る

内容はこんな感じ

機会平等、結果不平等という「アメリカ型競争社会」であった筈の日本。しかしバブル崩壊後の日本が進んでいるのは機会すら平等に与えられない「イギリス型階級社会」への道だった。世代を越えて継承される経済格差。同じ国に住みながら互いに交わることもなく、別世界で暮らす人々。イギリスの滞在10年に及んだ筆者が説く新しい階級社会の到来。

目次

本書の構成は以下の通り

  • 第一章 あなたが知らない階級社会
  • 第二章 総中流からネオ階級社会へ
  • 第三章 格差の個人史
  • 第四章 つぶさに見た階級社会
  • 第五章 あえて階級社会を擁護する
  • 第六章 ネオ階級社会へと向かう日本
  • 第七章 ネオ階級社会は「日本病」への道
  • 少し長い後書き

イギリスの階級社会の話は面白いが

職も違えば、住むところも違うし、言葉すら別というイギリスの階級社会の話は面白かった。このあたりは10年間イギリスで暮らした筆者ならではの視点であろう。ただ、イギリス的な階級社会が日本にもやってくるといった持論の展開は、どうしてそうなるのかという部分があまりに論拠が弱い。牽強付会の感はぬぐえない。著者自身の、自分語りパートが長いのも、脇に逸れすぎのように思えた。

 

と、初読時には感じたのだが、刊行から十余年を経て、機会の平等すら得られなくなっている昨今の日本社会を見ていると、日本社会の「階級化」は確かに進んでいるように思えるから複雑な気分である。

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