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『不可触民 もうひとつのインド』山際素男 インド人口の約四分の一が差別に苦しむ

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山際素男の代表作

元々は三一書房から出版されたもので、初版は1981年。

筆者の山際素男(やまぎわもとお)は1929年生まれのノンフィクション作家。朝日新聞社勤務を経て、世界労連に入る。その後インドへ留学。さらに作家業へと転じている。2009年に亡くなられている。

インド文化への造詣が深く、インドに関する著作を10作ほど上梓している。本作『不可触民 もうひとつのインド』は、山際素男のデビュー作にあたり、代表作ともなっている作品である。

刊行後二十年を経て、光文社のノンフィクション系文庫レーベル、光文社知恵の森文庫にて、2000年に再刊された。わたしが読んだのはこちらの版である。

不可触民~もうひとつのインド~ (光文社知恵の森文庫)

直接的な続編としては1982年刊行の『不可触民の道 インド民衆のなかへ』が存在し、こちらも2001年に光文社知恵の森文庫にて再刊されている。

この本で得られること

  • インドのカースト制度について知ることが出来る
  • インドの深刻な差別問題の根深さについて知ることが出来る

内容はこんな感じ

核を保有。五億もの人口を擁し、眠れる大国としていまも成長を続けるインド。しかし総人口の四分の一にあたる二億五千万人もの人々が不可触民として不当な差別を受け続けている。三千年間続いてきたインドのカースト社会で横行する被差別民虐待の現状を明らかにするノンフィクション。

根が深いインドのカースト問題

この本自体は四十年近く前に書かれた作品である。だが先日読んだ新聞でもインドのカースト差別についての記事が掲載されていた。飛躍的な発展を遂げ、21世紀はインドの時代であるともいわれる昨今だが、三千年続いてきたカーストという強固な枷はやはりそう容易に外せるものではないのだろう。

日常的に行われるブラーミン(バラモン)階級からの差別の数々。暴行。殺人。詐欺。レイプ。全く機能していない警察組織。そして深刻な貧困。牛糞から未消化の穀物を抜き取って食べなくてはならない程の貧困は想像の域を遥かに越えていた。驚くべき事件の数々もあまりに凄惨すぎて実感がまるで湧いてこないのだ。歴史的背景から培ってきたメンタリティが根本的に違うのだろうが、徹底的に差別され、搾取の果ての極貧の中にいる人々がこの国には二億五千万人も存在する。

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