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『中世の再発見 市・贈与・宴会』網野善彦・阿部謹也 中世史の両巨頭による対談集

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網野善彦と阿部謹也の対談集!

オリジナル版はなんと1982年刊行!平凡社選書からの登場であった。かれこれ40年も前の著作である。

筆者は網野善彦(あみのよしひこ)と阿部謹也(あべきんや)の両名。ビッグネーム過ぎて説明不要な気もするが、網野善彦は1928年生まれの歴史学者。専攻は日本中世史。一方の阿部謹也は1935年生まれの歴史学者で、専攻は西洋中世史。いずれも、中世史の研究家としては権威といっても差し支えない人物であろう。

この二人を組み合わせた対談が実現した時点で、中世史好きとしては感涙ものだったはずである。書店で見かけたときのワクワク感が今でも忘れられない。

現在手に入るのは、上記の平凡社ライブラリ版である。こちらの初版が1994年。この手の堅い本が、これだけの年月を経て復刊されるということは異例のことではあるが、この二人のビッグネームの対談ということを考えれば確かに納得は出来る。

わたしが入手した時点で、平凡社ライブラリ版は第五刷まで版を重ねていた。現在でも書店で見ることが出来るので、もはや古典の域に入ったといって差し支えないかもしれない。

内容はこんな感じ

網野善彦と阿部謹也。国史学と西洋史学界でそれぞれ新たな中世史観を提唱してきた二人の対談集。中世的社会が確立されていく中で生じた様々な事例、飛礫、市、売買と贈与、宴会、徳政、有徳、公等々について考察を巡らし、現在をも見通す新たな視点を浮かび上がらせる。

市・贈与・宴会

対談という形式もあってか、一般人にも理解しやすい平易な用語を多く用いて説明がなされているのでとても助かる。この二人にしてみれば基礎的な認識に過ぎないようなのだが、キリスト教に支配された西欧社会の特殊性。その特殊な西欧社会を標準として受け入れてしまった日本学会。などという考え方はなかなかに興味深く感じた。

飛礫の考察から始まって、宴会についての認識あたりまではついていけたのだが、後半の「公」概念についての対談はわたしごときの理解力では咀嚼しきれなかった(残念)。用語の意味から学ばないと駄目だなこりゃ。

初学者には少々キツイかもしれないが、網野善彦・阿部謹也的な中世史観に触れるには良書かと。もう少し勉強してから再挑戦したいところである。

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