ビズショカ(ビジネスの書架)

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『マングローブ テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実』西岡研介

JRの暗部に切り込んだ一冊

2006年7月から「週刊現代」に半年にわたって掲載された「テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実」をもとに書かれたノンフィクション作品。

筆者の西岡研介は1967年生まれのノンフィクションライター。本作で、第30回の講談社ノンフィクション賞を受賞している。

本書は2007年刊行。労使問題に詳しい人なら常識レベルの話なのだろうが、全く知識ゼロで読んだ身としてはまさに身の毛がよだつとはこのと。このJRはあまりに怖すぎる。本書は、日本最大の鉄道会社であるJR東日本の上層部が革マル派とベッタリであるという業界のタブーに切り込んだ一冊なのである。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★★(最大★5つ)

旧国鉄の労使問題について知りたい方、JR東日本とJR東海が何であれほど仲が悪いのか知りたい方、鉄道社会の闇を知りたい方、

 内容はこんな感じ

総線路長7,500キロ。一日あたりの旅客数1,600万人。民営分割化されたとはいえ、依然としてJR東日本は世界最大級の鉄道会社として君臨している。しかしこの超巨大システムの中枢に極左勢力の革マル派が浸透していようなどと、一体誰が想像し得ただろうか。国鉄分割民営化の徒花とも言える、革マル派問題に正面から切り込んだ迫真のノンフィクション作品。

国鉄民営化の闇の部分

20年前の国鉄民営化の際、最大の障害は世界最大クラスの労組であった国労(結成時50万人!)の存在だった。JRが国労をとことん冷遇して冷や飯を食わせたのは比較的知られている話。国労の地位が低下(組合員数1万5千)する一方で、旧動労(運転士や機関士が中心)が母体となったJR総連(組合員数7万7百)はいち早く分割民営化を受け入れ、経営陣と手を組むことで勢力を広げていく。

問題はJR総連の中核となるJR東労組のトップ松崎明が古くから革マル派の幹部であったこと。タイトルのマングローブとは、革マル派が長年にわたりJR内部の末端にまで浸透させた活動組織のコードネームのことを指している。

JR東日本とJR東海の仲が悪いのは

松崎の支配を嫌ったJR東海やJR西日本の人間はJR連合(組合員7万1千人)を組織。東海や西は経営陣もまた総連の影響下から離脱する。箱根の山を境にしてJR労組の派閥は真っ二つに割れているのだ。JR東日本と東海があんなに仲が悪いのにはこんなところにも理由があったわけだ。品川に新幹線止める止めないの話でも相当揉めていたらしいからな。

松崎は革マル派のメンバーを極秘裏にJR内部に招じ入れ、盤石の体制を構築。経営トップからも手が出せない聖域を作り上げてしまう。反対派へのイジメは陰湿かつ執拗で、つるし上げ、尾行、恫喝、運転妨害(客が乗ってるのに!)まで仕掛けるという壮絶さ。そして本人への恫喝が効かないとなると、その矛先は彼らの家族に向けられる。 経営トップも手をこまねいていたわけではなく、なんとかしなきゃ!と思って公安キャリア組の大物を監査役に天下りさせたら、とうに弱みのネタを握られていて、あっという間に敵に回られるという体たらく。

巨大化した組織は腐敗する

しかし哀しいかな、巨大化した組織が老いると、そこにはトップの腐敗化が待っているらしい。JR東日本の裏の顔となった松崎らは組織の資金を私的に流用。個人の別荘を全国に確保し、子会社には自身の息子を就任させる。労組のトップで「会長」のポストって普通ないもんな。こういう輩は結局やりたいように生きて、ぬくぬくと人生を全うしてしまいそうで本当にやるせなくなってくる。

巻末にはインタビューが二つ。一本目は革マル派の放逐に成功した早稲田大学の話。っていうか、早稲田怖えええ。早稲田祭の運営は長らく革マル派が握っていたらしく、売っているパンフは全部奴らの資金源になっていたらしい。ダミーサークルを多数作り、大学から予算を確保。早稲田が革マル派に落としていた金額は年間で二億を下らなかったとか。

そして巻末インタビュー二本目は公安出身で、国鉄分割民営化時の運輸大臣亀井静香。でもいかにも政治家らしい、当たり障りのない一線を画した慎重な回答に終わっていて残念。。もう少し踏み込んだ発言が欲しかった。

異世界を垣間見る

とにかく、いまの時代にこれほどまでに陰湿かつ、時代がかった異世界が存在することが衝撃的だった。真面目そうに電車を運転しているこの人がもしかしたら?なんてついつい思ってしまいそう。そしてこうした問題がなかなか報道されないのも問題だろう。巨額の広告予算を持つJRだからこそ、この手の焦臭い話題はなかなかマスコミからは出てこない。その意味で、本書が出た意義は大きい。

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