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『未来の年表』河合雅司 人口が減っていく社会で起こること

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シリーズ累計75万部のベストセラーシリーズ

2017年刊行。著者の河合雅司(かわいまさし)は1963年生まれ。産経新聞の元論説委員。現在は大正大学の客員教授。内閣官房有識者会議委員などを歴任している。

昨年、売れまくった新書作品である。どれくらい売れたのかと思って調べてみたら、2018年の春で44万部らしい。

続編の『未来の年表2』を含めると二作で70万部を超えるらしい。

この本が売れに売れたおかげで、新書のスタイルに「〇〇の年表」というカテゴリが増えてしまったのでは?というくらい、似たような構成の本がわらわらと出てくるようになった。 でも、それくらいの影響力があった一冊ではある。

あらすじの代わりに、本書で想定されている「未来の年表」

2016年 年間の出生数が100万人を切る
2017年 日本人女性の三人に一人が65歳以上
2018年 国立大学が倒産の危機に
2019年 IT技術者が不足し始める
2020年 日本人女性の二人に一人が50歳以上に
2021年 介護離職が大量に発生する
2022年 一人暮らし社会が本格化
2023年 企業の人件費が、ピークを迎える
2024年 日本人の三人に一人が65歳以上に
2025年 東京都も人口減少に転じる
2026年 認知症患者が700万人規模に
2027年 輸血用血液が不足
2030年 百貨店、銀行、老人ホームが地方から消える
2033年 全国の住宅の三戸に一戸が空き家になる
2035年 未婚大国が誕生
2039年 深刻な火葬場不足
2040年 自治体の半数が消滅の危機に
2042年 高齢者人口が4000万人を超える
2045年 東京都民の三人に一人が高齢者に
2050年 世界的な食料争奪戦に巻き込まれる
2065年 外国人が無人の国土を占拠する

『未来の年表』目次より

なんかもう、見ているだけでうんざりしてくるけど、未来と言っても、自分がまだ生きていそうな程度の、少しだけ先の未来なのである。そりゃ、気になるよね。

この本の成功理由は、年表形式の構成にしたことだと思う。ヤッパリ年表形式は、わかりやすいのだ。 

少子化だ、高齢化だ、空き家が増える、インフラ整備が追いつかなくなると、言ってはみても、具体的にいつ?どうなるの?というところにフォーカスして、数字やグラフとセットで説明されると、とても腑に落ちるのだ。

「日本を救う10の処方箋」は実現できる?

本書では、単にヤバいよヤバいよ!とただひたすら危機感をあおる だけではなく、「日本を救う10の処方箋」 と題して以下のような提言も行ってる。

1)「高齢者」を削減する(65歳という区分を見直す)
2)24時間社会からの脱却(不便でもいいじゃない)
3)非居住エリアを明確化(コンパクトシティへの流れ)
4)都道府県を飛び地合併(東京都島根が合併してもいいよね)
5)国際分業の徹底(不得意なことはしない)
6)匠の技を活用する(高い価値のあるものを作る)
7)国費学生制度で人材育成(海外人材をどう生かすか)
8)中高年の地方移住推進(地方移住の勧め)
9)セカンド市民制度を創設(第二ほ故郷を作ってみては)
10)第3子以降に1000万円給付(3人以上生まれないと人口 は増えない)

特に1)~4)の「戦略的に縮む」部分、コンパクトシティ化を推 し進めていこうという話は、もうかなり前から議論されているけど 、これまで拡大拡大一辺倒でやってきたこの国の経済が、いきなり 真逆の方向に舵が切れるのかは大いに疑問。

このご時世、いまだに 山切り崩して、新築の分譲地作ってたりするからね。

世界屈指の超高齢化社会を見てみたい

このような事態は、団塊、団塊ジュニアの人口構成が出来あがった時点で、容易に予測がついていたはずであろう。で、ありながら有効な施策を打ち出すことが出来ないまま、ここまで来てしまった。もはや小手先の対策ではいかんともしがたいだろう。もちろん、これは予測に過ぎないから、ここまではいかないかもしれない。しかし、もっとひどくなるものもあるだろう。

となれば、暗澹たる未来であっても、ひとつの現状認識として受け止めるしかない。自分で出来る備えを淡々としていくしかないだろう。

個人的には、世界史上でも類の無い屈指の超高齢化社会を、この目で見ることできるのは楽しみでもあるのだが、ちょっと暢気に過ぎるだろうか。

なんとマンガ版が登場!

なお、本書については2019年に『マンガ版 未来の年表』が登場している。作画は水上航が担当。

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