ビズショカ(ビジネスの書架)

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『未来の年表2』河合雅司 人口減少社会で変わること

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『未来の年表』の続編

2018年刊行。著者は1963年生まれ。産経新聞の元論説委員。現在は、高知大学客員教授、大正大学客員教授。内閣府、厚労省、農水省などの有識者会議委員などを歴任している。

2017年に刊行され、大きな反響を呼んだ『未来の年表』の続編的な内容となっている。以前に書いた『未来の年表』の感想はこちらから。

内容はこんな感じ

減少傾向が止まらない日本社会。40年後の総人口は9,000万人を下回り、100年後には5,000万人を割り込む可能性がある。人口が減っていく社会では何が起こるのか。慢性的な人手不足が続く企業、社会的なインフラの未整備、買い物難民の増加、そして地域社会の消滅。これからの時代に起こりうる、様々な可能性を検証し、今から個人が供えられることは何なのかを説いていく

「人口減少カタログ」で見る暗澹たる未来

前作は「人口減少カレンダー」を用いて、年代ごとにどんな社会問題が発生するのかを説明してきた。いわば縦軸で未来社会を俯瞰する一作であった。

本作はもうすこし卑近なところに降りてきて、私たち庶民の身の回りがどうなるのかを、住宅、家庭関係、職場、地域社会などの観点から予測していく。「人口減少カタログ」を通して考える、横軸で読み解く一作であると言える。

筆者の予測する人口減少社会での諸問題を以下にまとめた。

住居編

・事故の8割は家。老人の一人暮らしが増加し、住居内での転倒、転落が多発。しかし誰も助けに来てくれない
・相続者が居ない所有者不明の土地が増加する。将来的には全国の所有者不明の土地は北海道の面積相当まで膨れ上がる
・空き家の増加。地方ばかりか、都市部にも幽霊屋敷が続出する。
・現在建てられているタワーマンション群の大半は管理がうまくいかず荒廃する。

家族に起こること編

・農業の担い手が減り、国内で生産できる野菜が不足する
・学校の部活動が維持できなくなり、各校合同での体制に移行する
・体の不自由な高齢者が溢れ、バス、電車の遅延が頻発するようになる
・老後資金を貯められずに定年を迎える、貧乏定年が増加する

仕事編

・中小企業が後継者不足で消えていく
・オフィスの高年齢化が進む
・地方銀行が維持できなくなる
・運転手が不足し、電車、バス路線が維持できなくなる。

暮らし編

・投票所の減少で、選挙に投票することが困難になる
・ドライバー不足でモノが届かなくなる
・給油所がなくなり、ガソリン難民が増える
・山林が維持できなくなり、山が荒れ、洪水も増える

女性編

・女性の定年退職者が増加。しかしその受け皿は不足する
・女性の寿命が伸び、高齢女性の犯罪も増加する

 今から備えられることは?

相変わらず、暗澹とした気分にさせられる未来予測だが、筆者はこれから我々が備えられることとして以下の事例を挙げている。

・定年後も働けるうちは働く
・一人で二つ以上の仕事をこなし、収入先を増やす
・家の中をコンパクトにし、住居内での事故を減らす
・ライフサイクルに大きな影響を与える晩産晩婚は出来るだけ避ける
・年金繰り下げ受給を検討する
・起業する

現在の会社に出来るだけしがみつきつつ、他の収入源も探していこう。そして不慮の事故を防ぐために、住居内のコンパクト化を心がけようとと言ったところだろうか。どこまで対応できるかは個々自身によって大きく変わってくるだろうが、少しでも下げることが出来るリスクは下げておきたいところである。

「豊かな日本」を作り上げてきた"大人たちへ"

本書の巻末には、『「豊かな日本」を作り上げてきた"大人たちへ"」と題された一文が掲載されている。これは筆者の自戒を込めた、現在の超少子高齢化社会を作り上げてしまった"大人たち"世代への問いかけである。

過ぎてしまったことは如何ともしがたいが、この惨状を看過してきた責任の一端を認識し、少しでも次なる世代への貢献をして欲しいと結んでいる。

わたしの属している世代は、彼らよりは少し下のバブル世代だが、こうなってきた責任の一端は少なからずあるのだろうと自覚している。まずは、自身のこと、家族のことが第一になるだろうが、社会への貢献ということも考えながら、残りの時間を使っていきたい。

 

余談ながら、あとがきの謝辞には編集者、家族に加えて、飼いネコが含まれていた。わたしは大のネコ好きなので、個人的にかなり好感度が上がった(笑)。

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