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『定年消滅時代をどう生きるか』中原圭介 10年先を見据えた「これからの働き方」

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定年消滅時代の生き方は?

2019年刊行。筆者の中原圭介(なかはらけいすけ)は1970年生まれの経営アドバイザー、経済アナリスト。資産運用、投資術、経済、未来予測等、30作以上の著作を持つ。

東洋経済での不定期連載記事があったのでリンクを貼っておく。

toyokeizai.net

内容はこんな感じ

少子高齢化、生産年齢の減少、働ける日本人が減っていく社会では定年という制度はなくなっていく。そして、年金の支給開始年齢が先送りされていく未来では、70歳、75歳まで働き続ける必要が出てくる。かつてない時代の到来を前に、如何に備え、如何に考えておくべきなのか。定年消滅時代の処方箋となる一冊。

「定年」が消滅する

生産年齢人口とは15~64歳までの人口を指す。これが1995年に8,726万人であったものが、2018年には7,545万人にまで減っている。総務省の人口推計による今後の予測として、2030年には6,875万人、2040年には5,978万人、そして2056年には4,984万人と、遂に5,000万人を割り込むという惨憺たる未来が提示されている。

一方で、65歳以上の高齢者人口は2018年の3,558万人が、2042年のピーク時で3,935万人と当面減少する気配は全くない。

こうなると現在65歳からとされている年金支給開始年も、いずれは繰り上げられて行くであろう。現時点で50代より若い世代はこの流れに影響を受けざるを得ない。70歳、75歳まで働かざるを得ない時代が到来しようとしているのである。

新しいスキルを身につける

では、いかにしてこの未曽有の事態に備えるか。ここで筆者はリカレント(学びなおし)の重要性を主張する。かつては40年程度働けばよかったものが、これからは50年、55年となっていく。一つの会社、一つのスキルだけで生涯を全う出来た時代は終わる。

企業の寿命そのものも昨今で短命化が進んでおり、現在では24年程度となっている。これから社会に出る方は、少なくとも三社を渡り歩く覚悟が必要であると筆者は云う。

結果として、複数のスキルを身に付けることが、生き残るために必要となってくる。以前であればスキルの習得は長大な時間が必要となっていた。しかし、幸いにして、デジタル時代の到来で、スキル習得にかける時間的コストは大幅に短縮されている。

三年で一つのスキル。10年で三つのスキルを身に付ける。一つだけでは希少性の無いスキルも、三つ掛け合わせることで希少度が増す(良く聞く言説ではあるが)。本書では、出来るだけ現業に隣接したスキルを伸ばしていく方が、実用性があり、習得も容易なのではとしている。この点は確かに同感。

読書で「考える力」を身に付ける

最後に強調されているのは自身で「考える力」の大切さである。

この「考える力」を養う手段として、筆者は読書の効用を強く説いている。幅広いジャンルの書籍を数多く読むことで、読解力や論理力が鍛えられる。感性や直感力も育まれ、最終的にはデジタル時代を生き残るための武器になる。

ビジネス書を50冊読むよりは、1冊の古典を読むべしとする筆者の意見は、正鵠を射ているとは思うものの、その取っつき難さを考えると、少々躊躇ってしまうのも事実。ビジネス書の手っ取り早さに慣れてしまうと、どうしても古典の類にはなかなか手が出ないのだけど、それではダメなのだろうね。