ビズショカ(ビジネスの書架)

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『「普通」の人のためのSNSの教科書』徳力基彦 自分の名前で仕事がひろがる

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2020年刊行。筆者の徳力基彦(とくりきもとひこ)は1972年生まれ。NTT、IT系のコンサルファームを経て、アジャイル・メディア・ネットワークにて代表取締役社長や、取締役CMOを歴任。現在は企業のソーシャルメディア活用ついて啓発活動を行う、アンバサダープログラムに従事。noteでのプロデューサとしても知られる。

ネットやブログの世界では以前から有名な方である。

内容はこんな感じ

組織で働く人間が、ネットで自らをアピールして仕事の成果に繋げていくにはどうすればいいのか?有名人ではない。これといって秀でた技術もなければ、コミュニケーション能力が高いわけでもない。そんな「普通」の人に贈るSNSの教科書。収益化をゴールにしない。今の組織でキャリアアップするための方法を紹介していく。

SNSが本業の幅を広げてくれる!

Facebookのような実名前提のサービスを除けば、TwitterやInstagram、Blogサービスなどは匿名(ハンドルネーム)が日本では当たり前。本名や、ましてや所属会社を公開するなんてありえない。ネットはネット。リアルはリアル。しっかり分けて運用されている方が多いのではないだろうか。

実名や、所属先を公開してSNS運用を行うのはとかくリスクが付きまとう。炎上したらどうしよう。内部情報をうっかり書いてしまうかも。職場の人に自分の書き込みを見られるのは恥ずかしい。

しかし、そんなSNS運用を、本名+所属先公開でやってみようと説くのが本書である。ビジネスパーソンたるもの、もっとも詳しく、得意としているのは当然のことながら、毎日従事している仕事についてであろう。それをSNSで発信しないなんて勿体ない!

とはいっても、自分は業界の有名人でもないし、地位が高いわけでもない。コミュニケーション能力が秀でているわけでもない。だが、そんな「普通」の人でも、地道にSNSを続けていくことで、本業の幅を広げていくことが出来ると、筆者の徳力基彦は主張するのである。

それでは、以下、簡単に『「普通」の人のためのSNSの教科書』の内容を振り返っていこう。

ネットとリアルを分けて考えない

チャプター1は「SNS発信で「わらしべ長者」になる」。

ビジネスパーソンが実名+所属先公開でSNS運用をしていく上で、大前提として踏まえておきたい基礎部分が提示されている。要点は以下の五点。

  1. ネットとリアルを分けて考えない
  2. 文章力や完璧さは追及しない
  3. 「メディア」だと思わない
  4. お金儲けを考えない
  5. 役立つ情報かどうかは自分で判断しない

とにかく、堅苦しく考えないでまずは始めてみること。そして、収益化を考えないことが肝要であると筆者は説く。ブロガー系の人間に(わたしもそうだが)多いのだが、アドセンスを張り付けたり、アフィリエイトを頑張ってみたり。媒体単体での収益化を考えがちなのであるが、ネットで多少頑張ったところで稼げる額は本当に僅かである。

本業にプラスの効果をもたらしたいのであれば、まずは当座の収益は考えずに、楽しんで継続発信していける形を整えることが大切なのである。

そして、SNSでの発信が仕事に役立つ理由として、筆者は以下の三点を挙げている。

  1. プルのコミュニケーションが出来る
  2. 蓄積効果がある
  3. アウトプットが思考訓練になる

「普通」の人のネット発信は地道な積み重ねである。しかし得意分野で行う発信は積み重ねていくことで資産になる。そして思考の訓練にもなる。

筆者は特に「プルのコミュニケーション」の重要さを強調する。「プルのコミュニケーション」とは発信者が受け手に押し付けるタイプの情報(メルマガやDMなど)とは異なり、受け手が欲しいと思った時に自由に引き出せるタイプの情報である。

ストックされた専門分野の知見は、発信者の人となりを表すものであり、その情報を欲しいと思う人間には宝の山となるのだ。

まずはアウトプットしよう!

チャプター2は「「アウトプットファースト」でいこう」である。

とにかく発信してみなくては何事も始まらない。Facebook、Twitter、Instagramの三大SNSと、ブログを組み合わせて運用することを筆者はおススメしている。

また、実名+所属先公開でSNS運用をしていく上で欠かせない、所属先へのケアについて丁寧にその対策が書かれている。大企業であればあるほど、従業員のSNS炎上や、情報の漏洩には敏感であろう。そのため、就業規則の確認や、上長の許諾などは無視して通れない関門である。

続いて、いざ発信開始!となった際に、どのような姿勢でアウトプットしていくべきか、ポイントが述べられている。要点は以下の10個。

  1. 軸を決め、キャッチコピーをつける
  2. 「アウトプット・ファースト」でいく
  3. 自分なりのペースを見つける
  4. ロールモデルを見つけ、自分らしさを確立する
  5. PDCAを回していく
  6. 自己ブランディングに役立てる
  7. 「この人に読んでもらいたい」という気持ちで書く
  8. 「徳力メソッド」をつかう
  9. 対面で言わないことは発信しない
  10. 計画に時間をかけすぎない

どんなに拙い内容でも、とにかく始めてみることである。実際、後になって初期のブログの文書を読んでみると、びっくりするくらい低レベルだったりしてかな恥ずかしい。しかし、発信開始の頃は読んでくれる読者はほとんどいない。故に、気にしていても仕方ないのである。

そして、スタートしたら、PDCAを回して改善していく。このあたりは実際の仕事での経験が役立つのではないだろうか。わたしの実感では、始めて一年はほとんど手ごたえは無いのだが、アクセスが増えてくるとPDCAの回し甲斐が出てきて、モチベーションが格段に上がってくる。

発信力を高めるコツとは?

チャプター3は「アウトプットをしたたかにズラす」である。

この章の対象者はある程度、情報発信が継続され、ストックが溜まってきた方。初心者が中級者へステップアップしていくためのノウハウが紹介されている。わたし的にはこの章が一番楽しく読むことが出来た。要点は以下の10個。

  1. 意中の人や企業に探される準備をする
  2. 運営元に選ばれる話題や切り口で書く
  3. 流行りものには飛びついておく
  4. 未来に価値を置き、ポジティブに書く
  5. ニッチに絞って「深さ」で勝負する
  6. 正論よりも不完全を残す
  7. リアルを組み合わせる
  8. 横のつながりに目を向ける
  9. 無理のない範囲で背伸びする
  10. 量より質、数より熱量を重視する

これらはSNSでの発信を、本業に繋げていくための具体的なテクニック集である。意中の相手に振り向いてもらえるような記事を集中的に書いておく。その際には当然、ネガティブな要素は書かない。自分の専門性の「深さ」をアピールする。「プル」型の営業とでも言えるだろうか。この章で書かれていたことは、いずれも非常に参考になった。今度やってみよう(笑)。

リスクヘッジはしておこう

チャプター4は「ビジネスパーソンは「逃げるが勝ち」」。

最終章では、ビジネスパーソンとして発信していく以上、是が非でも避けねばならない炎上対策が書かれている。筆者は、ネットでの炎上が発生する背景として三つのポイントを指摘している。

  1. 個人の発言が見えるようになった
  2. 多くの炎上が「正義感」からはじまる
  3. 炎上ネタをメディアが探している

なかなか実感しにくいが、ネット社会は世界に向けて開かれている。不用意な発言が、瞬く間に炎上し、大事件に発展していく事例は枚挙に暇がないくらいである。

筆者は冒頭に「ネットとリアルを分けて考えない」と書いている。リアルの世界では言えないようなことは、決してネットでも書かない。これに尽きるのではないかと思われる。

実名はちょっとという人でも

実名+所属先公開でSNSをやっていくことの意義は判ったけど、でもそこまでは踏み切れない。そんな方も多いのではないだろうか。

本書では、まずは匿名で始めて、運用が軌道に乗った時点で実名に切り替える形でも良いのではないかとしている。また、ブログや、Twitter、Instagramなどは匿名で運用し、信用できると判断できた方のみ、実名のFacebookなどで繋がるという作戦もありだろう。

効果は落ちるかもしれないが、本書に書かれている心構えや、テクニックの数々は匿名運用するにあたっても、十分使える内容である。まずは、自分だけの「アウトプット」を始めてみる。とりえあず走り出してみるのも良いのではないかと思う。

最後は自分語り

かく言うわたし自身、かれこれ前のブログから数えると二十年近くネットでの発信を続けているが、依然匿名のままである。チキン体質なので実名で何かをしようという勇気は正直なところ出てこない。もちろん、アクセス数も大手と比べれば微々たるものだ。

ブログの内容も仕事とは関係のない、趣味の世界に限定したものなのだが、それでも長期に渡って発信を続けていると、思わぬ「ハプニング」が起きるものなのである。

以下、ちょっとだけ実例をご紹介しよう。

当ブログに先立って、三年前から始めている小説感想ブログ「ネコショカ」では、コミュニティECプラットフォームtemite(テミテ)さんよりお声がけをしていただき、公認アンバサダーとして、ネット書店「ネコ書架」を開かせていただいている(まだ作りかけだけど)。

また、照明器具メーカーのBenQさんから商品を提供いただき、モニター記事を書いてみたり……。

著者さまから発売前の自著をご恵投頂き、レビューを書かせていただいたり。

本の感想を書いて報酬がもらえるブックレコメンド(詳しい記事はこちら)さんで、何件か記事を採用して頂いたりもしている。

また、超スーパーニッチジャンルを扱うもう一つのブログ「白ポスト写真館」では、投票型のランキングサイト「みんなのランキング(みんラン)」にて、白ポストマイスターとして認定いただいた(笑)。

それ、微妙じゃね?というツッコミもあるかもしれないが、発信を継続しているからこそ生まれる出会いは確かにある。当ブログは未だ、出来て一年未満の現在育成中ブログだが、こちらも地道に育てていければと考えている。