ビズショカ(ビジネスの書架)

ビジネス書、新書などの感想を書いていきます

新書

『「世間」とは何か』阿部謹也 日本人は「世間」の中で生きている

晩年の阿部謹也が追い求めた「世間」論 1995年刊行。筆者の阿部謹也(あべきんや)は1935年生まれの歴史学者。2006年に物故されている。阿部謹也は一橋大学の出身で、学長まで務めた人物。 専攻はドイツ中世史で一般人向けの著作が多数ある。中でも『ハーメ…

『大江戸死体考―人斬り浅右衛門の時代』氏家幹人 大都市江戸のアンダーワールド

江戸のアンダーワールドを知る 1999年刊行。筆者の氏家幹人は1954年生まれの歴史学者。朝日カルチャーセンター掲載のプロフィールによると国立公文書館で勤務されていた方らしい。講談社現代新書の『武士道とエロス』『江戸の性風俗』など、江戸時代について…

『音楽のヨーロッパ史』上尾信也 音楽から西欧史を読み直す

音楽から歴史を読み直す 2000年刊行。筆者の上尾信也(あがりおしんや)は1961年生まれの音楽学者。本書の刊行当時は、桐朋学園大学短期大学部の助教授。その後、同短大の教授に。続いて、上野学園大学にて准教授に。現在は、教授職にある人物である。放送大…

『嫉妬の世界史』山内昌之 権力者の嫉妬は本当に怖い

安倍晋三に影響を与えた一冊 2004年刊行。筆者の山内昌之(やまうち まさゆき)は1947年生まれの歴史研究者。専門はイスラム地域研究と国際関係史。本書刊行当時は東京大学大学院の教授。現在は東京大学の名誉教授、武蔵野大学国際総合研究所特任教授。政府…

『未来の地図帳』河合雅司 47都道府県はもはや維持できない

「未来の年表」シリーズの第三弾 2019年刊行。筆者の河合雅司(かわいまさし)は1963年生まれ。2017年の『未来の年表』2018年の『未来の年表2』に続く、講談社現代新書における「未来の年表」シリーズの第三弾である。 旧作、二冊の感想はこちらからどうぞ。…

『J・S・バッハ』礒山雅 バッハ入門、定番の一冊

礒山先生が亡くなられてもう三年 日本でバッハ研究者といえばまずは礒山雅(いそやまただし)の名前が出てくる。1946年生まれで東大文学部卒。最近はNHK-FMの『古楽の楽しみ』でお声を聴くことが多かったが、残念ながら2018年にお亡くなりになった。雪の日の…

『未来の年表2』河合雅司 人口減少社会で変わること

『未来の年表』の続編 2018年刊行。著者は1963年生まれ。産経新聞の元論説委員。現在は、高知大学客員教授、大正大学客員教授。内閣府、厚労省、農水省などの有識者会議委員などを歴任している。 2017年に刊行され、大きな反響を呼んだ『未来の年表』の続編…

『未来の年表』河合雅司 人口が減っていく社会で起こること

シリーズ累計75万部のベストセラーシリーズ 2017年刊行。著者の河合雅司(かわいまさし)は1963年生まれ。産経新聞の元論説委員。現在は大正大学の客員教授。内閣官房有識者会議委員などを歴任している。 昨年、売れまくった新書作品である。どれくらい売れ…

『地下鉄の駅はものすごい』渡部史絵 東京メトロと都営地下鉄メインのウンチク本

地下鉄への愛が詰まった一作 2020年刊行。筆者の渡部史絵(わたなべしえ)は芸能人としての活動履歴もあるようだが、現在は鉄道ジャーナリストとして活躍している人物。 『東京メトロ 知られざる超絶!世界』『関東私鉄 デラックス列車ストーリー』『電車の進…

『みんなの民俗学 ヴァナキュラーってなんだ?』島村恭則 民俗学の懐の広さを知ることが出来る一冊

民俗学って何なのかを知りたい方に 2020年刊行。筆者の島村恭則(しまむらたかのり)は1967年生まれ。現在は、関西学院大学社会学部、大学院社会学研究科の教授。世界民俗学研究センター長。専門は現代民俗学、民俗学理論。 内容はこんな感じ 民俗学とは田舎…

『流言のメディア史』佐藤卓己 「ポスト真実」時代のメディア・リテラシーとは?

流言から歴史を読み解く 2019年刊行。筆者の佐藤卓己(さとうたくみ)は1960年生まれの社会学者、歴史学者。京都大学大学院教育学研究科の教授。専門はメディア史。2020年には紫綬褒章も受章している。 内容はこんな感じ 1938年。オーソン・ウェルズによるラ…

『奴隷船の世界史』布留川正博 奴隷制はまだ終わっていない

400年続いた奴隷貿易の歴史 2019年刊行。筆者の布留川正博(ふるかわまさひろ)は1950年生まれ。現在は同志社大学経済学部の教授。専攻は大西洋の奴隷貿易史、近代奴隷制史。 専門書、それも共著が数作。一般人向けの著作はほとんどない。本書が初めてかも。…

『50歳からの逆転キャリア戦略』前川孝雄 「定年=リタイア」ではない時代の一番いい働き方、辞め方

「リクナビ」「就職ジャーナル」元編集長が説く50代のキャリア戦略 2019年刊行。筆者の前川孝雄(まえかわたかお)は1966年生まれ。リクルートの「リクナビ」「就職ジャーナル」の編集長職を歴任。その後独立。人材育成、研修、組織開発などの業務を主として…

『離島を旅する』向一陽 ニッポンを大きく一周!端っこへ行こう!

島好きなら読みたい一冊 2004年刊行。筆者の向一陽(むこういちよう)は1935年生まれのジャーナリスト、探検家。元共同通信社勤務で日本山岳会の会員。 世界各地を登山、探検目的で訪れており、奥アマゾン探検隊の隊長職も務めている。どっちが本業なのだろ…

『小さな藩の奇跡 伊予小松藩会所日記を読む』増川宏一 小藩が残した日常の記録

一万石の小藩が残した150年間の記録 2001年の本書刊行当時、わたしは夏の旅行で松山を訪れていた。銀天街の書店にて手書きポップの威力に負け購入してしまった一冊がコレ。ご当地ものには弱いのだ。 本書は、伊予小松藩(現在の愛媛県西条市小松町)に残され…

2020年に読んで面白かった新書・一般書10選

皆さま、明けましておめでとうございます。 年が明けてしまったが、一昨年、昨年同様に、2020年に読んで面白かった新書・一般書10選をお届けしたい。いつもであれば、新書のみで構成していたのだが、2020年は新書だけだと数が足りないので、一般書からもチョ…

2019年に読んで面白かった新書8選

昨日の2018年版に引き続き、元ブログからのお引越し記事。昨年のネタですみません。2020年版はここ数日中にはアップできる見込み。 今回も2019年に発売された著作ではなく、「2019年に読んだ新書」が対象である。ちょっと古い作品も混ざっているがその辺はご…

2018年に読んで面白かった新書8選

元のブログから、非小説系の書籍感想をこちらのブログに移しているので、年間ベスト記事もこちらに引っ越してみた。今さら2018年の話かよ!って感じだけどご容赦を。 2018年に出た新書ではなく、「2018年に読んだ新書」が対象なので注意。特に順番とかは無し…

『美しい日本の掲示板』鈴木淳史 インターネット掲示板の文化論

2ちゃんねる全盛時代に書かれたネット文化論 2003年刊行。筆者の鈴木淳史(すずきあつふみ)は1970年生まれの売文業(ってこの本には書いてある)。主として、文芸評論家、クラシック音楽評論家として活躍。著作にはクラシック音楽に関しての辛口評論が多い…

『50代 後悔しない働き方』大塚寿 「勝ち逃げできない世代」の新常識

アラフィフになったら読みたい一冊 2020年刊行。筆者の大塚寿(おおつかひさし)は1962年生まれ。リクルート出身のビジネスコンサルタント、実業家、ビジネス書作家。 著作が多数出ているが、もっとも知られているのは『40代を後悔しない50のリスト』かな。…

『ゴールキーパー論』増島みどり GKにしか見えない風景がある!

旧版の講談社現代新書のデザインは良かったのにね 2001年刊行。講談社現代新書からのリリースだが、当時このレーベルは一冊一冊全てデザインが違っていた。現在の色が違うだけの素っ気ないデザインと比べると格段の出来栄えと言える。 筆者は1961年生まれの…

『藩とはなにか』藤田達生 「江戸の泰平」はいかに誕生したか

戦国バブルの弾けたあとに 2019年刊行。筆者の藤田達生(ふじたたつお)は、三重大学、同大学院の教授で、専攻は日本近世国家成立史の研究。 内容はこんな感じ 安土桃山時代から江戸時代へ。戦乱の続いた時代から太平の世へ。この国の社会基盤は大きな変容を…

『上級国民/下級国民』橘玲 日本に分断をもたらした三つの要素

分断の正体を読み解く 2019年刊行。筆者の橘玲(たちばなあきら)は1959年生まれの作家。小説家としてのデビュー作は2002年の『マネーロンダリング』である。 実用書の書き手としては、同年に上梓された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』で知られる。…

『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』大木毅 人類史上最悪の戦場

2020年の新書大賞 独ソ戦2019年刊行。筆者の大木毅は1961年生まれ。第二次世界大戦、特にドイツ軍に関する著作が多い。 なお、本書は2020年の新書大賞第一位に輝いている。昨年を代表する新書作品の一つである。 www.chuko.co.jp 内容はこんな感じ 1941年。…

『ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実』望月優大 「移民」を認めない国、日本

在留外国人300万人時代の「移民」事情 2019年刊行。筆者の望月優大(もちづきひろき)は1985年生まれ。日本の移民文化、移民事情を伝えるウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」の編集長。 少子高齢化を受けて、日本人の生産者人口が激減する中、飛躍的なペース…

『老いと記憶』増本康平 痴呆症への備えを学ぶ

脳の老化について知っておくべきこと 老いを迎えるにあたって、ガンや心筋梗塞、高血圧などの不安と並んで、気になってくるのが自身の痴呆症への危惧であろう。体の衰えもさることながら、脳の老化、痴呆症の進行はメンタルに相応のダメージをもたらすはずで…

『マグダラのマリア エロスとアガペーの聖女』岡田温司 絵画を元にマグダラのマリア像を読み解く

「マグダラのマリア」の受容史 2005年刊行。筆者の岡田温司(おかだあつし)は1954年生まれの西洋美術史の研究家。現在は京都大学大学院の教授。 これは面白い!本書は名前だけは知っていても、あまり日本人には縁が薄い「マグダラのマリア」さんについての…

『ナポレオン四代』野村啓介 二人の皇帝、二人の息子

四人のナポレオンの生涯をたどる 2019年刊行。筆者は1965年生まれ。東北大学大学院国際文化研究科の准教授。 副題に「二人のフランス皇帝と悲運の後継者たち」とあり、更に帯の惹句には「栄光と没落 偉大な父とその影を追った息子」とある。ナポレオン一世や…

『信長軍の司令官』谷口克広 死屍累々、織田信長軍団の光と影

信長軍の変遷をたどる 2005年刊行。筆者の谷口克広(たにぐちかつひろ)は1943年生まれの戦国史研究家。織田信長に関する著作が多数ある。 戦国ヲタは読んでおけという一冊。面白いぞ。尾張の小大名時代から、京都上洛時、伊勢攻め、浅倉浅井戦、本願寺攻め…

『下流喰い』須田慎一郎 消費者金融の手口と実態を知る

消費者金融の実態に迫る一冊 2006年刊行。当時なにかと話題であった消費者金融の実態に迫った一冊である。この時期は大手消費者金融の不祥事軒並み明るみに出ていて、メチャクチャ叩かれていた頃である。実にタイムリーなタイミングでの刊行であった。 筆者…